W杯アジア最終予選 日本(H)1-0イラク(A)
何とか勝ちきりましたね。
これでブラジルW杯にまた一歩近づきました!!
詳細は追記に……。
◆強かったイラク
結果を見れば、近いFIFAランクを持ち引き分けに終わったオーストラリアの方が強いのだけど、間があいたこともあってそれと同等くらいにイラクが強く見えた。そのイラクを強く“見せる”マジックを使っていたのは間違いなくチームを率いていたジーコ監督だったことは間違いない。
彼の仕掛けは試合開始前にもう始まっていた。先発メンバーを前節から大幅に変えてきたのだ。これでまず日本チームの困惑を誘う。事実、試合開始当初は相手のセットプレイにおいて日本は相手選手をフリーにし、あわやというシーンを幾度か作られてしまった。いかに国を背負う代表クラスのプロと言えど、突発的な相手の情報操作においては相手のポジションを確認し、マークを再設定するまでには相応の時間を要してしまったわけだ(ジーコからすれば、その間の開始数分から十分前後の立ち上がりで一点を取りたかったのだろう)。
大幅に先発メンバーを入れ替えたわけだが、その入れ替えにも、先発変更による情報撹乱がメインなのか、それとも変更したメンバーの選出の方がメインなのか分からないほど大きな意味があったように思える。起用されたのは若い選手が中心だった。日本の先発の平均年齢が約27歳だったのに対し、イラクの先発の平均年齢は約22歳という。あくまで平均なので何とも言えないが、これはA代表と五輪代表が戦うような年齢差なわけだ。
それでもジーコが若手を起用した理由はおそらく二つ。一つは若さゆえの豊富なスタミナ。もう一つはジーコが展開したディフェンス重視の戦術に対して好意的ないし従順な選手が若手に多かったのではないかという推察からの戦術理解度。もちろん真相は分からない。若い方が血の気が盛んで「俺が、俺が」となるかもしれないし、私の推察通りある程度年数を重ねている方が「今までの実績とプライドが」となっているかもしれない。
どちらにせよ、スタミナとディフェンス重視の戦術理解度がイラクの若手選手は高かったのは事実だろう。
(そのため後半30分過ぎから投入されたベテランのアタッカーたちがピッチに入ってからはイラクの守備能力は大きく低下した。もちろん、これは0-1の状況で点を取らないといけないからでもあるが)
試合が始まればそのスタミナと守備意識を最大限に生かしたカウンターサッカーを展開してきた(これは五輪の男子日本代表が取った戦術に近い)。日本において攻守の要であるボランチ(長谷部・遠藤選手)と中核である本田選手にマンツーマンマークが入り、この三人へまともにボールは入らない。両サイド(岡崎・清武・長友・駒野選手)が何とか絡んでくるものの、攻撃バリエーションが限定されてしまって決定打にはならなかった。
そして後半30分になるとジーコは一気に本来スタメンを張る主要アタッカーを三人投入し交代カードを全て切ってきた。あそこまで迷いがない(おまけに三枚の交代枠全て使い切った)のなら、おそらく当初からジーコの試合プランだったのだろう。それがハマって点を奪うことは出来なかったが、その意図は間違いなくピッチ上で見せつけられた。
こうして日本はイラク相手に苦戦し、観戦している側に「イラク強ぇ」と思わせられた。スローインからのリスタートによって岡崎-前田選手による先制点が決まったものの、それ以外は正直五分五分、一歩間違えたり紙一重だったりで結果がどうなっていたか分からないレベルだと思う。
結果論だが、この試合においては全てジーコの手のひらの上だったと思う。唯一の誤算は一瞬の油断からあのリスタートで失点だけ(まぁ、欲を言えば試合開始直後のチャンスで確実に一点取っておきたかっただろうが)。
どのスポーツにおいても割と「名選手が名コーチ・名監督になるとは限らない(むしろなれない)」と言われがちだし、実際その通りな部分もあるとは思うが、少なくともこの試合に限って言えばジーコはFIFAランク78位のチームを同ランク23位のチーム相手に善戦させることが出来る名監督だった。
◆踏ん張りきった日本だが
一方で日本も先発メンバーには、イラクとは違う意味で交代を余儀なくされた。前節終了時の累積警告でスタメン常連の今野・内田選手が出場停止となりDFラインは入れ替えを余儀なくされ、CBサブの最有力だった栗原選手も前節の退場で出場停止と言う状況。
さらに10番を背負う香川選手は突然のベンチ外(前日練習で何かあったと言われるがこの記事を書いている時点では詳細不明)で、内田選手に変わって右SBが期待された酒井宏選手も足首の怪我を再発させベンチ外という状態。辛うじて左SBの長友選手が先発復帰したことでDFラインほぼ入れ替えという状況こそは免れたが……。
とは言え、DFラインは踏ん張った。結果、零封だったわけだから、GK川島選手の好セーブや相手が引いていた状況、UAE戦を経ているとはいえ即席としては合格点と言ったところだろう。一瞬のカウンターへの脆さは、予測したボールカットやディフェンスが出来る今野選手不在の穴を痛感してしまうが、それでも零封である。踏ん張ったと思う。
その中で露見した日本の課題は、大きく分ければ二つ。
一つは高さへの弱さ。日本人の体格・骨格を考えれば世界での身長に比べ見劣りするのは致し方ない。しかし、そうは言ってもいつまでも「仕方ない」でもしょうがないだろう。これに対処できなければ世界とは戦えない。実際、もし今日のイラク選手にあともう一歩の技術と精度が備わっていたら負け試合だったとしても不思議ではなく、その「あと一歩の技術と精度」が間違いなく世界トップレベルのチームには備わっている。
対処としては相手へのマークとセカンドボールを拾い続けるしかない。もちろん前線からプレスをかけて精度のあるロングボールを蹴らせないことも重要だと思う。実際に大幅な先発入れ替えで把握しきれずマークが甘く、セカンドボールを拾えなかった序盤の日本の苦戦を私たちは目にしている。
もう一つは攻撃バリエーション。決定力とも言えるかもしれないが……まぁそれは今さらだしねw 本田・遠藤・長谷部選手を封じられて日本の攻撃は立ち行かなくなっていた時間帯が間違いなく存在していた。
ただ、それに関してはそれを打開出来る前田・岡崎選手のフリーランニングや飛び出し、ゲームメイクが出来る清武選手の存在など能力の高いMFが多く揃う日本の強みで補えた、とも思える部分でもある。
ただザッケローニ監督は交代をあまり使わないから何とも言えないが、これと言って戦術としての攻撃バリエーションが少ないのではないかと思ってしまう。ピッチ上の選手で多彩な攻撃が出来るのだろうが、途中交代で流れを変えられる選手の存在も必要になるはず。
今日の交代も守備強化のための細貝選手以外は、時間稼ぎのための交代だった。1-0の状態で今の状況を崩したくなかったのだろうし、その辺りは難しい駆け引きなのだろうが、何かもう少し日本の層が違った意味で厚くなれば良いなと思う。
厳しい言い方になっているかもしれないが、最終予選折り返しとなるこれから先は日本は試合の多くをアウェーで行わないといけない。地の利・ホームの利がある試合はほとんどない(確かあとホームで出来るのはオーストラリア戦だけだったはず)。そうなれば、当然気候やピッチコンディションも変わる上に相手に有利な状態で試合をしないといけないわけだ。そこで勝って、勝ち点を積み重ねて、絶対にW杯本戦に行って欲しいからこう思う。
いや、それだけじゃないのかな。W杯本戦に行くだけでなく、行った先で躍動し「日本スゲー」と他国の人たちに思わせるような日本人選手の活躍を目にしたいからこう思っているのかもしれない。
◆アウェー連戦が始まる
さて、少し触れたが、次の試合を考えないといけない。次は11月のオマーン戦。間は約2カ月でアウェー戦になる。ちなみに、その次の来年3月末に予定されるヨルダン戦もアウェー戦になるので、ここから半年間は最終予選はアウェーのみとなる(ホームで最終予選が出来るのは来年6月のオーストラリア戦になるので約9ヶ月後となる)。
とりあえず、今回苦労した先発メンバーは順調にいけば(怪我等含め)今野・内田・香川選手が戻ってくるので、いつも通り戦えるだろう。オマーン相手にはホームで3-0で勝っている相手でもあるので、本来の先発メンバーが本来の試合勘を持ったままで試合に臨めれば負ける要素はない。
そうなるとあとはレギュラー選手の試合勘とコンディションになるわけだ。海外組が増えることは日本の地力アップなので嬉しいことではあるが、そこで試合に出続けていなければ意味が薄い。所属チームでの定位置獲得に苦労している長谷部選手は今まさにその代表のような存在。何とかこの二カ月で定位置を取るなりなんなりして、試合勘を取り戻してほしい。
現役の選手である以上、「試合に出る」ことが何よりの調整でありコンディションを整える手段だとも思うしね。
そういう部分では国内組レギュラーの大部分は試合に出続けていることがほとんどなわけだから、そうした部分は強みかもしれない。状態次第では今回のイラクのように「コンディションが良い選手」を使っていくのもアリなのかもしれない。
さて、他国の勝敗次第ではあるが、日本以外のチームが勝ち点2、得失点差0以下で並んでいることを考えると次の試合で勝ち点13まで伸ばせれば本戦出場は目の前と言っていい(日本は4試合終えて3勝1分け勝ち点13、得失点差+10、2位のオーストラリアは2試合終えて0勝2分け勝ち点2、得失点差0。仮に9月10月の1試合ずつを連勝しても勝ち点8で得失点差もさすがに+10には届かないだろう)。
ただ、日程の関係で実は日本は最終戦を前に日程を終了してしまう(日本の最終予選最後は来年の6月11日だが、オーストラリアらは同月18日まで試合がある)。無論、そこまで持ち込まれるような接戦の前に本戦の切符はつかみ取りたいし、今の成績を考えればそれはないとは思うが、それらを踏まえても確実に勝ち点を3つずつ積み重ねて早々に本戦出場を決めてほしいし、次のオマーン戦もその一歩にしてほしいと願う。
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