アクセル・ワールド 第17話
『Fragmentation ; 分裂』
≪あらすじ≫
強奪された“飛行アビリティ”に代わる《心意システム》の力と倉崎楓子(スカイ・レイカー)から彼女が以前使っていた強化外装“ゲイルスラスター”を譲り受けたハルユキ(シルバー・クロウ)。
もともとは、能美(ダスク・テイカー)が彼の持っていた“飛行アビリティ”欲しさがことの発端でありそれに巻き込んでしまったチユリ(シトロン・コール)、自分から取り戻した友情のはずなのに放棄してしまったタクム(シアン・パイル)の視線にバツの悪さを感じるハルユキだったが、ふとしたことから対戦が始まっていることに気づく。
対峙しているのは、ダスク・テイカーとシアン・パイル。
タクムはタクムでハルユキの不自然さから調べ上げ、彼が“飛行アビリティ”を失っていることに気づいていた。
いよいよ始まるパイルとテイカーの試合。一度はフィールドとの相性がパワー型のパイルへ有利に働いていたのだが、テイカーは突如全武装を解除し、素手でパイルへと向かってくる。どす黒い赤紫に輝くその光と、パイルのバンカーを素手で受け止めると言う物理的にあり得ない現象に、観戦していたクロウは、それが《心意システム》であることに気づく。
地に伏したパイル。トドメを刺してポイントを得ようとするテイカーに、観戦していたクロウは「奪うなら自分からにしてくれ」と土下座までして頼み込む。その油断につけこみ、クロウは自らも獲得した《心意システム》と譲り受けた“ゲイルスラスター”でテイカーを遂に追い詰めるのだが――
≪感想≫
バトルシーンは、動画・映像美として考えた時には良く動いていてカッコいい。個人的にはシアン・パイルがマグマ化した大地の中から「どやっ」と言わんばかりに立ち上がったシーンが最高だった。ロボット物の作品だと、炎や爆発の中からロボットが出て来るというのは、剣を構える時の“サンライズバース”やミサイル表現の“板野サーカス”と同じロマンの一つだと思う。
と言うのも本来、人間ではそういうことは難しい。燃え盛る炎や大爆発があれば人の身体なんてただではすまない。でも、特に人型を模した擬人型のロボットならそれが可能。むしろそうした炎や爆発の中ですら耐え抜く“力強さ”“頑丈さ”の暗示にもなる。
そう考えた時に、ところどころが戦闘やマグマ化した大地からのダメージで傷を負ったり焦げたりしている中でも力強く立ち上がったシアン・パイルの姿はとてもカッコ良かった。これはキャラクターが使うのは「自分の生身の肉体」や「人間のアバター」ではなく、「ロボットっぽいアバター」だからこそ出来ることなので、こうした演出は非常に巧いと思うし、サンライズの長年の蓄積がもしかしたらモノを言った部分なのかなと思った。
さて主人公であるハルユキもカッコ良かったと思う。“ゲイルスラスター”は空を目指したと言うにはあまりに小型なランドセル(バックパック)だったが、その空中挙動はクロウ本来の“飛行アビリティ”とは似て非なるものとなっていたと思うし、その差別化も良かった。
“飛行アビリティ”がどこか優雅に、力強く羽ばたいていた印象だが、“ゲイルスラスター”は推進システムで強引に肉体を押し上げている感じ。この辺りの「違い」というのは、ウイングゼロとトールギスみたいな関係だね、と一応某ガンダムを応援しているBlogとしてはこんなことも述べてみる。
それはともかく、“ゲイルスラスター”はその内、人類なら実現しそうな感じ。実際に人が背中にランドセル型のバックパックを背負って空を飛ぶと言う方法はすでに現実のものとなっている(気になる方は「Jetlev」で画像検索でもすればたぶん出てくる)。
それは、水を推進力としていることもあって、「空を飛ぶ」と言うよりは「水上を浮遊する」と言う程度のものだが、そうした「本来求めた性能には実は及んでいない」という点もなんだか“ゲイルスラスター”っぽいとは思わないだろうかw 空を目指しながら届いた距離は東京タワー程度で、実際の“飛行アビリティ”を持つアバターはそれをはるかに超える高度と速度で、しかも空中による自在な機動性を得ているわけだからね。
シーンとしても熱い展開。その是非はいろいろあるだろうし、気がつけば二対一状態になっていたシステム面でも言いたいことはあるが、主人公とその親友が互いを信頼し合って卑劣な敵を打ち倒すというのはお決まりな展開ではあるが、それは同時に胸熱な展開でもある。
後味は悪いが、エンターテイメントとして作品の完成度は今までの中でも随一だったと思う。
しかしその一方で、そうした素晴らしい部分が多かっただけにアニメ版として、あるいは作品としての粗が際立ってしまったのかもしれない。確かに展開としては胸熱だったとはいえ、いきなり二対一の状態になってしまったのは、これまで裏技・バグ技を使う相手に正面から挑んでいったハルユキの主人公としての軸が間違いなくブレた。
たぶん、領土戦なんてものもあるくらいだから、通常大戦でも当事者たちの許認可次第でいわゆる無制限中立フィールドのようなバトルロワイヤル戦への発展もシステム的には可能なことなのだろう。でも、それが分かるのは原作読んでる人だけで、原作読んでないといきなりのパイルの乱入に( ゚д゚)ポカーンである。
その辺りは、原作には説明は無かったかもしれないが、アニメ版としては事前にもっと説明は欲しかった。例えばハルユキが倒されそうになっているタクムを観ていることしか出来ない中で、「このままじゃタクムまで! ……何かタクムを助ける方法はないか、ないか、ないか!?」と葛藤して「そうだ! 通常対戦でも相手に認めさせれば僕も――」くらいの閃きと心理描写があれば、説明ではないが立派な伏線となって結果的に同じシーンでも心象はまるで違ったと思う。
まぁ、でもそんなのは些細な部分。作品としては結果的にあっさり《心意システム》合戦に転落したのは残念の一言に尽きる。これはアニメが悪いんじゃなくて、原作通りの流れだろうから作品そのものとしての粗という感じ。
これによって《ブレインバースト》あるいはここまでの作品の魅力だった厳密な物理法則とシビアなダメージ判定と言う存在は事実上意味を亡くした(誤字ではないですw 意図的にこちらの感じの方が適切かなと)。
《心意システム》にそれを知らない通常プレイヤーでも打ち勝てるような欠陥や弱点がない限り、ここから先は《心意システム》がモノを言う戦いに代わる。『ドラゴンボール』シリーズと一緒。フリーザ編まではスーパーサイヤ人という存在の希少性と絶対性がどこかにあったが、セル編になるとスーパーサイヤ人合戦になった上に2、3、4と(事実上の)レベル制によって世界観がガラリと変わってしまった。
ただ、『ドラゴンボール』シリーズを引き合いに出すと、別にスーパーサイヤ人が増えてつまらなくなったと思うことはあまりなかった(全くなかったわけでもないが)から、『AW』もここからの頑張り次第ということになるのか。そうなると、まずはシアン・パイルが《心意システム》を修得するところからスタートかな。
しかし、そこには別の危険性もあって(特に『ドラゴンボール』シリーズはそれにハマった感じだが)パワーインフレが起きやすくなってしまうという問題だ。能美編はこれで良い。この能美編がどういう形で終わるか分からないが、次からは少なくとも《心意システム》を使う能美以上の敵やボス、問題を出さないといけなくなると、また《心意システム》を超える何かや武器・アイテムを出さないといけなくなって、結果的にパワーインフレが起きる。そして、作品が長く続けば続くほどそのパワーインフレに読者は飽きてしまうものだ(ジャンプ系の作品に良くあることだけど)。
すでに『AW』にもその傾向はある。まぁ、クロウの存在(というか“飛行アビリティ”)がチートっぽかったが、まだそれ以外のスペックが弱いので決定打が可能な火力もなければ、そもそもテイカーが言うように“飛行アビリティ”を最大限に活かせる遠距離攻撃もなく、防御力も弱いという弱点の多さが文字通りバランスを保っていた。
ハルユキがそうした弱点に対して、その弱点を相手に突かせないようにしつつ、いかに自分の武器である“飛行アビリティ”と豊富なゲーム知識・それによる閃きを活かして勝つかと言う部分が面白かったけど、《心意システム》によって、(使い方次第だが)火力・防御力はある程度補われてしまった。近接格闘の射程も改善してしまった。失ったアビリティを補う要素も出てしまった。
そうなると、もう今のクロウって“空は(一応)飛べる”“火力もそこそこある”“射程も良くなった”“相手の攻撃と自分の《心意システム》で相殺可能”と弱点らしい弱点が消えた。まぁ、強いて言えばやっぱり射程と防御力だから、能美編終了以降のパワーインフレが起こるとすれば何らかの遠距離攻撃手段を得るか、防御能力が向上する何かを得るかのどちらかか……となってしまって、本当にそうなるともうパワーインフレは止まらなくなる。
話が長々としてしまったが、果たしてこの作品における《心意システム》の真意とはどこにあるのか、という部分が重要だと思う。“災禍の鎧”編までには登場しなかったわけだから《心意システム》が作品としてのテーマ性を担っているとは考えづらい(後付けでテーマ性に即したシステムとして登場させた可能性はあるが)。
もし《心意システム》がただの戦闘要素なら上記で挙げたようなパワーインフレに陥って作品として自滅するかもしれない。一方で作者が《心意システム》そのものに何かの謎や問題を解く“鍵”としての役目を負わせて登場させたのであれば、まだ期待は持てるのではないだろうか。
その辺りはまだ完結していない作品だけに《心意システム》の是非については(原作を読んでいないのならなおのこと)語りつくすことは出来ないが、現時点でのこのシステムは作品として危険な存在であることは間違いない。
あ、先輩の水着について語るの忘れた(ノ∀`*)アイター
でも、「ゆっくりで良い。キミを守る楽しみがなくなってしまうからな」と言う発言は、やっぱり「加速世界でのレベルアップの手ほどきはタクム君に奪われて、《心意システム》の教授までレイカーに奪われたorz」フラグだね(ぇ
次回『Invitation ; 挑戦』 えっととりあえず先輩編? ここでお預けかー。『さんかれあ』みたいなやり方で、ここのスタッフにしては珍しく区切り方が良くなく「やっちまったな」って感じ。まぁ、先輩編が能美編にいい影響を与えてくれるのなら問題ないだろうが……。
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NoTitle
心意を使えないタクがステージ特性を考えながら序盤は優位に進めていたのは良かったですね
AWはデュエルアバターの戦闘が作品の華ですから今回こういったところに力が入ってて良かったです
>あっさり《心意システム》合戦に転落したのは残念の一言に尽きる
心意の真意については話が進めばある人から改めて説明あると思うので・・・
ただ心意全開の対戦なんてテイカーの言っている「僕たち」くらいしかやっていないので悪しからず
>あ、先輩の水着について語るの忘れた(ノ∀`*)アイター
来週から沖縄だし、水着シーンはあると思うのでその時に語ればいいじゃないかと(笑)
一つあるとすると、ハルを救った時の傷を隠していないところですかね。堂々としている姿はとても誇らしげだったと思います
>ここのスタッフにしては珍しく区切り方が良くなく「やっちまったな」って感じ
なお原作再現としては完璧だった様子
あの後4か月待たされたからなあ・・・