魔法使いの夜 プレイ日記【13】
第十三章『ほしのはなし』
~帰り道(Chaldea)
~ある日の出来事(What happened today)
《あらすじ》
蒼崎橙子は敗走した。十年後の知識を一時的に借り受けた青子の手によって、三咲市の土地に入るとカエルになってしまう呪いをその身に受けて……。
それから六日。大晦日のその日、昼間は久遠寺邸の大掃除にその時間を費やしていた草十郎に青子は「実家に帰るから準備して」と彼を自分の実家に連れて帰ることを明言する。
その目的は、駅から実家まで四十分近く歩くのでその暇つぶしと……祖父に彼の記憶を消してもらうため。
魔法使いとなった祖父が他人に興味を持つのは珍しいこと。青子はそれが同時に、祖父が自分と彼の記憶を消すための口実でもあったと考えていた。
そして、祖父が介入する以上消えるのは草十郎だけでなく青子も同じ。両方の記憶を消さなければ、人と人との関係は断ち切れない。
ホンの少しだけ未練のある青子と、自分だけならまだしも青子も記憶を失うことを残念そうに思う草十郎。それでも草十郎は、自らの足で蒼崎家へ向けて足を動かす。
一方、青子は「どうせこれで最後だから」と考え、ずっと気になっていた草十郎の過去について問いただす。
いよいよ辿り着いた蒼崎家。青子に指示されたのはそこから五分と離れていない洞穴。そこへ向かう草十郎を待っていたのは、もはや肉体を持っていない魔法使いで――
《感想》
本編最終章。青子の使う『魔法』の真相と、橙子との姉妹バトルの結末はもう出ているため、本当にエピローグと言った感じ。
草十郎の過去については、前回予想した通り、葛木宗一郎に限りなく近いものだった。そんな彼が青子と出逢い、青子の考え方に触れることで、人生観を変えていく姿は良いなと思う。青子は「私の言葉でいちいち人生観変えられちゃ荷が重い」と嫌そうに口にしたけれど、それだけ草十郎にとって青子は眩いばかりの存在で……そして、青子にとっても草十郎は自分の考えを曲げてでも救っても良いと思える不思議な存在になっていた。
祖父は「今は結ばれているが、いずれは離れることは避けられない」と語られる二人の関係。これが何を意味しているのかは分からない。人と人である以上、いつかは死ぬのだから、時間を操る青子はもしかしたら殺されない限り死なないのかもしれないし、もしそうなら永遠を生きる青子と普通に人として老いる草十郎ではいずれ離れることになるだろう。
いや、そんな極端な話じゃなかったとしても、高校を卒業すれば草十郎と青子は違う道を歩むはずだ。
青子は、たぶん今は一般社会と魔術師を五分五分くらいで両立させているが、卒業後はどうだろう? 彼女のもともとの夢は、中学卒業後はライブハウスを回りながら大学受験の為に勉強すると言うものだったので、大学は行くのかな? そうすると大学四年間は高校時代と大きな差のない両立を続けるだろうが、その後はたぶん一般社会と魔術師を二分八分くらいで「両立」をせずに生きていく。そうなれば必然的に草十郎との結びつきは薄れていくだろう。
そして草十郎は高校卒業後どうなるだろうか。彼なら大学には行かないだろう。高校を卒業してそのまま働くような気がする。そうなれば、当然彼が久遠寺邸に留まるとは限らないわけだ。青子と有珠が望まなくても、彼の事情でまた彼は山を降りた時のように、今度は久遠寺の森を出てさらに都会に出て行ってしまうのかも(そして、そうなれば今度こそ記憶を消す作業を行うかもしれない)。
仮に青子に触発されて大学に行ったとしても、それはその惜別の日を四年後に先伸ばしただけ。
まぁ、そんなわけで有珠を加えた三人での雑居は高校、あるいは長くても大学までの間なんだろうなーと思ってしまう。もちろん、それまでに草十郎が何らかのきっかけで魔術の世界に足を踏み入れたのならまた違うだろうし、青子か有珠かどちらかと結ばれるようなことになれば、それもまた違う未来が待っているのだろうけど……。
そして、エピローグ。別館の図書室で青子が見つけた忘却のルーンが描かれた魔導書。それは図書館の本棚の上に棚上げされて隠されていた本で、青子がそれを知らないのであればそんなことをしたのは有珠しかいないわけでw そして、青子もその本を閉じて「二度と開けることはあるまい」と予感めいたことを感じていた。
草十郎の記憶を消すまでの期間限定の雑居。それは裏を返せば、草十郎の記憶を消さなければそれはずっと続いていく雑居。もちろん、上で書いたように現実問題として無期限延長と言うわけではないのだけど、それでも今ある生活に心地よさを覚えて延長しようとしている二人の努力と想いはきっとどんなものよりも純粋なんだろうなと思う。
いつかやってくる別れも、きっと青子が口にしたように「後悔は、するものじゃなくて無くしていくモノ」としてその別れを「後悔」ではなく「旅立ち」として互いに受け入れられる日が来るのだろう。
青子がホンの少しでも未練を覚えたのなら、きっと別れの日は今ではないと言うことだったのかもしれないね。
総評はまた別の機会に書く予定だが、本当に楽しめた。ただ、選択肢がないことや、選択肢がない割にこのボリュームでは、納得はしても満足しないような人も出てくるだろうな、と言うのが客観的な評価だろう。私はあの演出とクオリティならこのボリュームでも十分だと思うし、7~8000円を出したわけだけど、十分その値段の対価となり得るモノだったと思う。
あまり他のゲームと比べることは出来ないとは思うけれど、おそらくこれから10年、内容はともかく演出や作品を魅せるための仕掛けのクオリティは、この業界において見本・お手本となるものだろう。TYPE-MOONの作業量と言うものがどれほどかは分からないが、あまりに長い年月を製作に当てているので、ぶっちゃけこのクオリティの作品は早々出てこないとは思う。どこかで、妥協してクオリティを落とすなり、魅せ方を楽な形にするなりになるだろうし。
ただ10年後、いろいろと環境や技術が改善・発展して、このクオリティが標準になるような時代が来てくれれば、嬉しいなと思う。
本日はここまで。次回は本編外の1.5章の感想を書く予定。
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