魔法使いの夜 プレイ日記【11】
第十一章『青色の魔法』
~教会へ(To the church)
~狼の話(A tale of the wolf)
~憧憬と焦燥(Adoration and impatience)
~―――夜へ(To the night)
《あらすじ》
久遠寺有珠、そして蒼崎青子は、外部からやって来た――否、戻って来た魔術師・蒼崎橙子と彼女が連れていた使い魔・ベオウルフによって完膚なきまでに敗北し、土地の管理者としての権利を事実上喪った。
有珠は負けた際に橙子から飲まされた毒によって体内の魔力回路を解毒するまでまともに使えない状態となり、青子はその場を目撃した草十郎が嘔吐し昏倒するほどの無残な姿を何とか大手術によって一命を取り留めている状態。
それでも青子は眼を覚ますと、夜通し看病してくれていた有珠と作戦会議を開始する。最初から相手は本気ではないことを青子は感じていた。本気だったならきっと自分は生きていまい、と。
リベンジ前提の前哨戦。
その前哨戦で青子も有珠も叩きのめされたのだ。
橙子が土地の管理者として申請するのにかかる時間を考えれば、今夜中に橙子を倒して土地の管理者としての地位を取り戻さなければならない。
青子は術後間もない身体での戦いを決意する。
有珠が仮眠を取るタイミングで、草十郎は青子の病室を訪れる。彼の日々のバイト経験と真面目な性格から記憶していた、「旧校舎に潜む金髪の少年」という要素から青子は橙子の工房があるのが、三咲高校の旧校舎だと判断する。
戦いに赴く決意を固めた青子に、草十郎は苦言を呈す。しかし、青子はそれに怒気を以て応える。彼女の固い決意に、いつになく肩を落とす草十郎に、彼女たちが匿われている教会の神父・文柄詠利(ふみづか・えいり)は彼が青子に感じている羨望と嫉妬の正体を明かす。
それは思えば最初から分かっていたもので――
《感想》
この手の伝奇モノというか、ノベル的なモノにおいて、当然主人公たちが成長したり、何かに気づけたりすると言うメンタル的なファクターは必ずあるものだが、本作におけるその部分はまさしくこの十一章だろう。
正直なところ、青子の生き方にはこれといって共感は出来ない。リアルにもし、身近にこんな人がいたらたぶん自分との相性は最悪だろうな、と思いながらも、それでも青子に魅力を感じるのはそのビジュアルや容姿でもなければ魔法使いと言うスペックでもなく、やっぱりその生き方が凄いからなんだと思う。
二次元の小説(ビジュアルノベル)の中の主人公に何言ってんだ、と思うかもしれないが、そもそもこういうのってそういうものだろう。二次元のものは、もちろん多種多様で一概に何かを語ったり、ひとくくりにしたりすることなんて出来ないけど、そこにはやっぱり「理想」と言うモノが多かれ少なかれあると思う。それが希望的な理想なのか、絶望的な理想なのかはまた置いておくとして、創作物にそうした「理想」が組み込まれているのなら、それを実感し読み解くこともまた創作物を楽しむ一つの醍醐味なはずである。
書き手(この場合、奈須きのこさん)が感じる「理想」を具現化した像の一つが蒼崎青子。そして、その「理想」は理想だからこそ受ける反発(現実とはとてもそぐわない、など)もあるし、だからこそそんな反発すら凌駕するほどの美しさを持つのだ、と。
ある意味で、どこまでも高潔で、どこまでも孤独。
青子があの生き方で前を見て歩む限り、やっぱり私が望むような未来はきっとこの先には残っていないのだな、と思わずにはいられない。詠利が口にした「青子は前を向いて進むためなら、今までの全てを捨てられる」と言う言葉がこれほど重いと思ったことは無い。なぜならそれは、青子は自分が前を歩いて進むためなら、いずれ有珠も草十郎も捨てることが出来てしまうのではないか、と言う危惧に直結するし、その後の未来の彼女の有りようが、その危惧が事実に変わることを示しているように思えてならないからだ。
私のようにハッピーエンドやらグッドエンドやらを求めるプレイヤーの想いを見事に打ち砕く一言。それでも、そういう生き方をする彼女を、薄情だ何だと思いながらも、その生き方は「蒼崎青子」というキャラクターが歩む生き方に最もふさわしくて、だからこそ彼女は美しいのだと感じてしまうのだ。
とまぁ、なんか偉そうにつらつらと書いてきたけど、実はそれはそれで詠利の言葉には疑念も持っている。青子は本当に前を進むために全てを捨てたのだろうか、と。
確かに、何の変哲もない普通の中学生から、いきなりそんな俗世とは価値観も倫理感も違う魔術の世界に飛び込む道を示されれば、それはそれまでの全てを捨てる必要があったのだろう。彼女が持っていた夢も、それはもう見事に砕かれたわけだ。
でも、だからと言って青子が本当にそのすべてを捨てたのかと言われると、そうにも思いきれない。学校での彼女、魔術を目撃した草十郎への対応などなど、それは本当に捨てたと言えるのか、と。
たぶん、彼女はそんなことを本当は認めていない気がする。前に進むためにはあまりに重いから、自分が背負ってきたものを捨てるというのは、青子が最も嫌う「逃げ」の生き方のように見えるからだ。彼女ならどんなに重くてもそのすべてを背負って歩を前に進めるのではないか、と。
まぁ、あとは詠利神父の青子に対する見解が外れているのは、彼自身が口にしたことでもある(メキシコへ~云々のくだり。あれってつまり、詠利は青子の内面を計り間違えていたってこと。もちろん、それは過去の出来事なのでそれを経て現在は正確に把握している可能性もあるが)。
そうした部分からまだ淡い希望はいろいろと持っているんだけどねwww
なんか青子について長々と語って来たけど、冒頭で挙げたメンタル的なファクターがあったのは草十郎である(笑
でも、草十郎って共感しやすい瞬間としづらい瞬間が混在している難しい主人公なので、その辺りが難しい。山奥で育ち降りてきた順応性の高い草十郎。それは同時に自我・自己と言うものが薄いと言うこと。どんな環境にも適応できてしまうと言うことは、逆に言えばそれは確固たる“個”を持っていないと言うことになってしまう。それはプレイヤー色に染めやすいのだけど、それはまた選択肢があるゲームでの話。選択肢のない、小説と変わらない状態では逆に感情移入はしづらい。
ただ一つ明確に感じられるのは、そういった草十郎はそうだったからこそ、その対極の位置にいる確固たる“個”を持った青子に惹かれたのだ、と言うこと。まぁ、そう言われればそうなのかなーと言う感じ。これは彼の過去がほとんど見えないからだろう。せいぜい分かったのは、彼の記憶の原初には誰かに絞殺されそうになった“痕”が辛うじて垣間見えたくらい(首の包帯はそのためか?)。
そういえば、公式HPで紹介されながらここまでまったく登場のなかった詠利・唯架・律架の登場w 出てこないんじゃないかって思ってたよwww まぁ、わざわざ名前のあるキャラがこうして出てくるわけだから、いずれ彼女たちも青子と有珠と草十郎の物語に(敵か味方か)もっと大きな形で絡んでくるのだろう。
しかし、聖堂教会の支部と魔術協会の支部が一緒なんて、もうあの教会の内部そのモノが地雷原みたいなものだと思うんだが(ノ∀`*)アイター
本日はここまで。次回は近々。明日かな?
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