偽物語 総評
阿良々木暦(あららぎ・こよみ)を中心に起こっていた“怪異”は、その専門家で暦にとって先達でもあった忍野メメ(おしの・めめ)が街を去ったことで一つの区切りがついた。“猫”の怪異を抱えていた羽川翼(はねかわ・つばさ)の想いを知りながらそれでも二人の関係は変わらず、“蛇”の怪異に取りつかれた千石撫子(せんごく・なでこ)とは途絶えていた交流が再開。
“猿”の右手を二十歳まで抱えなければいけない神原駿河(かんばる・するが)はそれを隠しながらも前と変わらず、むしろパワーアップして生活し、今も“蝸牛”として徘徊している八九寺真宵(はちくじ・まよい)は出逢う度に暦のセクハラを受け、
“蟹”の怪異を背負っていた戦場ヶ原ひたぎ(せんじょうがはら・ひたぎ)とは恋人同士として着実にその絆を育んでいた。
そして始まる新しい物語。
本物と偽物を巡る物語の主人公は、暦が愛する二人の妹である火憐(かれん)と月火(つきひ)を巡る物語。正義そのものを自称する彼女たちに降りかかる本物と偽物を考え直させる物語とは? そして暦の影に住まいながら半ば絶縁状態の吸血鬼の残りカスにして、いまや暦の半身・忍野忍(おしの・しのぶ)との関係は?
そんな『偽物語』の私の評価ですが...
A+
です。(SS、S、A~Dの評価)
では、詳細は続きをどうぞ。
※あくまで評価は、私的主観によるものですのでご了承下さい。
偽物語 総評
放映日:2012年01月~2012年03月(全11話)
私が視聴した放映局:TOKYO MX、テレビ埼玉
総評
※評価についてはこちらからどうぞ→評価について。
シナリオ構成 評価:S
前作よりも哲学的に『本物と偽物の違い』を考えさせられる良い話だった。
しっかりとこの全11話と向き合う中で、本物とは何なのか、偽物とは何なのか、善悪とは、その精神とは……いろいろなことを考えさせる話だろう。
アニメはエンターテイメントであるので何も考えず楽しめる作品も良いが、30分と言う時間を費やして観るものであり、そこには原作者やアニメスタッフの意図やメッセージ性のある芸術でもあるので、こうしてアレコレ考えて、そして自分の糧に出来るかもしれない内容も悪くない。むしろ、それがいい。
エンターテイメントとしても悪くなく、その部分を両立している希有な作品だと言える。
演出 評価:A
相変わらずのシャフトポーズと独特の色彩感、場面切り替えの手法はさすが。より洗練され、数を抑えながらさらに効果的に使っている気がする(実際に少ないらしい)。
ただ、この手法はもうこの作品以外では使えないだろうなとも思っている。この作品であり、シャフトだから許容している部分があり、この色彩や手法を他の作品でやられるとまるで出鱈目に感じてしまうことだろう。
優秀だが、汎用性のない手法に見えて来た……。
作画 評価:A
全11話と言うことを考えた時にこれがどこまで妥当なのかどうか、というのはちょっと難しい。作画と言っても、画質や背景だけでなくて、本作の場合は独特のポーズやバース、モーションがあるためそこに対する労力がどれくらいに判断していいかが分からないのだ。
ただまぁ、場面的にクライマックスなシーンよりもエロさ(例えばハミガキシーンとか)に作画クオリティを重視している印象があるw 果たしてこれは良いのか悪いのか……。そりゃあ、視聴者として見ればサービスシーンが高クオリティで描かれているわけだから良いのだろうが、作品として観た時は……。
CAST 評価:A
キャストには大きな変更はなく、新キャラとして貝木、余弦、余接が加わったくらいか。
あとはアニメ化としては忍の声が代わったくらいか。もともとCDか何かで別のひとが演じていたため、アニメ用に別途選び直すのは不思議ではない。まぁでも代わる前があの人だったので、声優のイメージにキャラの心象が引っ張られないよう配慮したようにも見えなくもないが……。
ちなみに後任(と言っていいのか?)となる坂本真綾さんの声は個人的によく合っていたと思う。どうやら複数段階における大人形態(力を取り戻した状態?)があるようで、最終話で見せたハイティーン姿、さらに劇場版ではさらに大人な本来の“伝説の吸血鬼”キスショット・ハートアンダーブレード(だっけ?)としての姿もあるだろうから、そうした大人Ver.での神々しさや高潔さ、威圧感などを踏まえた上での坂本さんのキャスティングだと考えれば、異論を唱える人は少ないだろう。
OP/ED/BGM 評価:S
話数自体が少なく、またメインとなる話が『かれんビー』『つきひフェニックス』だけだったためOP自体の数は前作よりも少ない。もちろん、前作の意図をくみ取ればこうなるのは必然で、むしろそれに対し火憐と月火が大きく関与しない話用に通常OPを用意してバリエーションを頑張って保たせたと言ったところか。
楽曲のクオリティの高さは問うまでもない。
総合 評価:A+
内訳:S評価(5点)×2+A評価(4点)×3=A+(4.4点)
変わらない面白さを持つ物語シリーズの2012年初頭段階での最新TVシリーズ。
前作では次回予告用キャラと化していた(笑)火憐と月火にスポットが当たった話はバランス良く、また前作でとりあえず何らかの区切りがついたヒロインたちが後日談のように語られ描かれていくさまも良かった。
なにより、思想的・哲学的な要素が多分に盛り込まれていたことが個人的には良かった。30分という貴重な時間をこのアニメを観るためだけに消費するのだ。たかが30分のように思うかもしれないが、1日は24時間しかなく、それを考えればその1/48をこのアニメのために費やす。実際に睡眠時間や食事など生きるために必要不可欠な時間をここから除外すれば、一日に使える時間の1/20とか1/25を使っているわけ。
もちろん、それが終始エンターテイメントな作品で特に何も考えずに笑ったり、泣いたり出来る作品も悪くないし、私もそういう作品が大好きなんだけど、こうして30分画面と向き合って原作者やアニメスタッフがキャラクターやその口から台詞を通して私たちに示す思想や哲学がどんなものであり、そしてそれは私たちにとってどんなふうに糧となり得るのかを考えるのはとても意義のあることだと思っている。
まぁ、前作より評価が低いのはボリューム的な問題かw あともうちょっと月火に出番がwww
おまけ
ベストキャラTOP3
1位 忍野忍
ツンデレ吸血鬼めっ!(違 個人的には和解した入浴シーンも良いんだが、やっぱりハイティーン姿の最終話の堂々としたたち振る舞いや暦を信じるその絆に惚れる。
2位 阿良々木暦
怪異に関わっているのが自分の妹たちと言うことや忍野メメがいないことで今作の暦の立ち位置は、前作とはちょっと違うと思う。兄として、先達として妹たちと接し、そしてそんな妹たちを守るために立ち向かっていく彼の姿はカッコ良い……そこから差し引いて余りあるほどのド変態だけど(ノ∀`*)アイター
3位 阿良々木火憐
今作のメインポジション的存在。本来ならシリーズヒロインであろうひたぎの変わらないところとか評価したかったけど、それでも色んな意味で火憐はハイスペック過ぎたwww
物語シリーズはまだまだ終わらないと小耳に挟みましたので、今後もTの感想で内容を補完していきたいと思います。