偽物語 『かれんビー 其ノ肆』
『かれんビー 其ノ肆』
≪あらすじ≫
月火からの「助けて。」のメールに、ひたぎの拘束を力づくで破壊し帰宅することを選んだ暦。だが、帰宅してみるとそこには暦にとって恩人であり、日替わりで勉強を教えてもらっている同級生・羽川翼(はねかわ・つばさ)も一緒にいた。
同級生の前で見せていた顔と、兄妹だからこそ見せていた顔のギャップに驚かれてイマイチやりづらい暦は、なかなか口を割らない妹たちに見切りをつけ、翼を部屋に呼び出し事情を聞き出す。
中学生たちの間で流行った悪意のあるお呪い。それを意図的に流行らせている人物がおり、当てずっぽうだったはずのファイヤーシスターズの推論は的中。そこで優秀すぎる翼が助力したため、本当に犯人に行きあたってしまい、そこで火憐はその犯人から何らかの怪異を宿されたという。
犯人の名は貝木泥舟(かいき・でいしゅう)。それは、暦の恋人である戦場ヶ原ひたぎ(せんじょうがはら・ひたぎ)が最も嫌悪する、自分たち一家を騙した一流の詐欺師の名前だった。
事情を聞き出した暦は「このまま妹たちと面と向かったら怒鳴りつけてしまう」と自覚し風呂に入ることに。だが、その時自分の前に姿を現したのは、今の吸血鬼体質の原因でもあり、忍野メメが姿を消した今は暦の影で行動を共にする忍(しのぶ)だった――
≪感想≫
◆偽物が本物に劣る道理はない
暦の偽物云々の意図は、ある種の同属嫌悪。私のこれまでの考察は近かったが当たらずじまいといったところか。“遠からず近からず”ではないのがポイントだ。命中的中を語るなら、私が感想巡りをさせていただいたBlogの中に見事的中の考察をしていた方がいたと思う。与えられた物語の要素から見事作者やスタッフの意図をくみ取って正解にたどりついたのは純粋に羨ましい。まぁ、羨ましいとは思うが今更自分の考察を否定する気もないので“近かったが当たらずじまい”という表現をしたのだが。
まぁ、それはさておいて。
これは原作がとても良い構成なのだろうが、“偽物“と言うモノについて多角的に描かれているのだなと思った。貝木泥舟、ファイヤーシスターズ、そして忍野忍と阿良々木暦。本物ではないが故に、もしかしたら本物を超える可能性を持っている偽物たち。いろいろな面から本物と偽物と言うものを描いているのかもしれない、と思えた。
真贋の真理というかそういうモノは、私はむしろ『Fate/stay night』という作品の在り方に共感していたが、これもそれと同じベクトルにあるようで、ますます好きになれそうだ。つまり、「偽物が本物に劣る道理はない」と言うこと。これは、忍が劇中で口にしていた台詞でもあるが、つまりそういうことだと思っている。
本物を模した偽物は本物よりも劣る。
というのが、一般的な認識と言うか一種の常識に近い感性ではないだろうか。偽物とはある意味複製なのだから、どんなに精巧にコピーしたところで、それがオリジナルである本物を超えることはないという認識なのだろう。
だが、本物を模して生み出す偽物だからこそ本物を超える可能性を秘めている。
そもそも私たち日本人はむしろそういう考え方に寄った生き方をしてきたのではないだろうか。古くは大陸から入ってきた技術、数十年前までは欧米の技術や物品が入ってきて、それを私たち日本人は時に自分たちのライフスタイルに合う形に、時に世界に通用する形に作り変えて来たわけだ。一時は「技術立国」と言う言葉が出たくらい、私たち日本人にとって既存の技術や物品をより高度に昇華させることはお家芸・十八番だった側面があったはずだ。
もちろん新しいものをゼロから生み出した日本製のものもあるとは思っているけれど、でも私たち日本人はゼロから生み出すのではなくすでに存在しているものをベースにその欠点や弱点をより克服する形で完成度の高いものを生み出すことに良くも悪くも優れていた気がする。
話を戻すが、それと同じことではないだろうか。すでにある大本のオリジナルの本物。どこまで行っても本物は本物だ。プラスもなければマイナスもない。でも、それを複製した偽物は複製故にマイナスになりやすいが、その一方で複製だからこそ本物を超えるプラスに働く可能性を秘めるのだ。
◆死ぬまで偽物であり続ける阿良々木暦
羽川翼に指摘され、暦は妹たちに言った偽物発言が自分に言い聞かせている、一種の自己嫌悪であり同属嫌悪だということを半ば認めた。正直、暦が語った「『正義と力』の相互関係」については正しくはあるわけだから“偽物”というよりも“未熟”であるだけであって、“偽物”というフレーズを使うことにやや疑問もあるのだが……。まぁ、そうした本物になりきれない“未熟”さを包括した意味での“偽物”ということなのだろう。
ただまぁ、そんなことは置いておいたとしても先に挙げた「『本物と偽物』の関係」含めて、暦は一生偽物であり続ける覚悟を、もしかしているのではないかと思わされるわけだ。
例えば、先述の偽物発言について翼に指摘されそれを自分にも当てはまることだと暦は認めた。だが、暦ならもしかしたら反論出来たのではないかと思っている。彼は中途半端とはいえ吸血鬼のスキルをわずかに宿し、その影にはいまだに吸血鬼が宿っているのである。人を超えた力を彼は持つわけだ。その力を使えば、彼は「本物の正義の味方」として語れたとしても文句はない。
でも、彼はそれをしなかった。暦は偽物発言に自分が含まれることを認めたのだ。
なら、彼の言う「正義の味方(ないし正義を行う)に値する“力”」とはいかほどのものなのか。どれほどの力を持てば、例えば彼は自分を正義の味方だと自称するのだろうか?
単純な戦闘力も、スキルも完全ではないし今では微々たるものとはいえ、人の枠を逸脱した暦を超える者はほとんどいないだろう。知識や情報だけを正義とするとも思えない。
つまり、阿良々木暦は死ぬまで本物にはならず偽物であり続けることを決めているのではないか、とさえ思う。
偽物であった方がいいのは、まぁ例えば前述のように「『本物と偽物』の関係」において偽物が本物を上回る可能性を秘めているからだったり、あるいは完全な人間でもなければ完璧な吸血鬼でもない中途半端な自分に対する戒めなのかもしれなかったりすると思うのだが……
でも、もしかしたらそれは彼が「正義の味方=神」とさえ思っているのかもしれないとさえ感じられる。
結局のところ、「正義」はもちろん「正義の味方」なんてのも人の身にも人の手にも余るシロモノだということだ。人の枠を逸脱した暦にすら届かない、それこそ神の領域。だからこそ、そんな神の所業を真似しようとしている自分たちを暦は、自惚れないよう自戒の意味も込めて「正義の味方“ごっこ”」と呼ぶのではないか、とも思うわけだ。
多くの怪異を見て、触れて、関わってきた暦が、自身も怪異のひと欠片を宿しながらそれでも届かないものだと思うもの。怪異そのものが世界であるなら、その世界ですら届かない正義の味方と言う、まさに神のみぞ行えるだろう所業だからこそ、人の手で行えるのはそんなコトの真似事でしかないのかもしれない。
無論、真似事だからと言って本物の正義の味方を超えられないとは限らない。もしかしたら、とある一瞬だけならそんな神の所業すら超えられる奇蹟を引き起こせる可能性を秘める。そんなことを、もしかしたら無意識の内に暦は考えているのかもしれない……と、勝手に深読みしている(笑
◆余談
友人の前と家族の前で見せる顔が違うなんて、普通の人なら当たり前のことだ。親の前と兄弟の前で見せる顔が違うなんていうのもザラだ。「身内に厳しい」というのは、古風な日本人気質の表れかもしれない(私もそんな感じだし)。
だが、そんな当たり前のことに対して驚いて指摘している翼は……まぁ、そういう家庭環境なのだな、と邪推してしまう。いや、邪推ではなく事実なのだと思うけれど……翼はやっぱり「何でもは知らない。知っていることだけ知っている」のだな、と。彼女は家族のなんたるかなんて分からないということか……だって、彼女はたぶん家族なんて知らないのだから。翼の問題はやはり根本的な解決を見ていないのではないかと思わされる一瞬だった。
でも、今回視聴していて「正論の鬱陶しさ」みたいなのを実感した。正論なんだけど、それが逆に腹立つ…みたいな(苦笑 物語シリーズのヒロインで一番人づきあいしたくないのはやっぱり翼だなw というか、パッと見は聡明で良妻賢母になりそうな翼が一番“結婚”や“主婦”といったモノから実は縁遠い気がしたwww
そして、ファイヤーシスターズは思いのほか、
兄である暦にデレてるなーと(笑
もしかしたら、彼女たちの「正義の味方ごっこ」はあの兄の背中を見て育ったという環境以上に、兄にかまって欲しいというメッセージじゃなかろうかとさえ思ってしまう(ノ∀`*)アイター いや、アレも暦と同じで兄妹だけの前で見せる顔と、そうでない人がいる前で見せる顔の違いでしかないのだろうけれど、そうだともしかしたらいろいろとニヤニヤ出来るのかなって。包丁持参の乱入は勘弁だが(爆
結構喋っていた忍野忍。原作を読んでないので暦と忍の関係性というか、和解せねばならぬ状況に陥ったのかはハッキリ言ってサッパリだが、これから先は戦力としてだけでなくまぁ忍野メメの代わりに怪異の説明役としても活躍してくれるのかな? 寿命問題やずっと影を通して一緒にいるなど割と美味しいポジションだよねw
キャストは変わったようだ。前任者は“あの”人だったとか。まぁ、ここでそれを語ると面倒なので割愛するが、別に違和感も何も忍が前作でしゃべっていた記憶がないから問題なんてゼロだった(苦笑
そして、きっと暦は忍がロリコンだから一生許さないと決めたに違いないと確信している(`・ω・´) シャキーン さすが阿良々木暦、歪みない変態である(違www
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忍を語るにはやはり傷物語あってこそなので。