偽物語 『かれんビー 其ノ貳』
『かれんビー 其ノ貳』
≪あらすじ≫
暦は、急遽空いた暇な一日を、怪異絡みの事件で手を差し伸べた後輩・千石撫子(せんごく・なでこ)と交わした「今度遊ぶ」という約束を果たすために使う。しかし、両親不在のはずの千石家に突然母親が帰って来たことで遊びも中断。
またしても暇を持て余すことになった暦は、次の日に予定していた、同じく怪異絡みの事件の当事者の後輩・神原駿河(かんばる・するが)の部屋を片づけるという約束を今度は果たすことにした。
神原邸へ向かう道中、暦は“大きい方の妹”こと阿良々木火憐(あららぎ・かれん)がなぜか逆立ちで街中を闊歩する姿を目撃する。あまりの姿に呼びとめて注意をする暦だが、火憐の方は「ボランティア」と称して何やら用事がある様子。
撫子から、「火憐と“小さい方の妹”こと阿良々木月火(あららぎ・つきひ)が、中学生の間で不思議と流行っている呪術(おまじない)を広めている張本人を見つけようとしている」ということを聞かされていた暦は火憐に対して勘繰るが、火憐は「今日中に終わる」と告げて走り去ってしまう。
それを見送る形になった暦は、追いかけることも出来ず、致し方なく駿河の部屋へと向かう――
≪感想≫
◆正義と正義の味方と正義の味方ごっこと
冒頭の暦のセリフであり、本作のタイトル「偽物語」に掛ってくるであろう「偽物」という暦の指摘に直結するフレーズである。
自分たちのしていることが正義そのものだと言うファイヤーシスターズ。だが、そんな彼女たちに暦は確信を持って断言するのだ――それは“偽物”だと。
無論、暦の言葉にした意図を明確に、且つ簡潔に汲み取るにはまだ物語は始まったばかり過ぎる。この時点ではまだまだ彼の言葉の意図を完璧に掴むことは難しいが、それでも本作のテーマやキーフレーズになりそうな言葉が出てきたので、現段階で考えられることを少しだけ書き記しておこう。
「正義」とは、辞書を引けば「人の道に正しいこと」と知ることが出来るだろう。だが、そもそも「人の道に正しいとはどういうことか」と問われれば、そこに明確な答えも定義も線引きもない。ゆえに、今のアニメ作品では「正義は人それぞれが持っている」という解釈がされることや、私も含めてそうやって勧善懲悪ではない作品に対してそういう評価を下すことが多い。
人の数ほど正義があるのであれば、彼女たちファイヤーシスターズのしていることは正義だということは必ずしも出来ない。なぜなら、彼女たちの考える正義と、周囲の正義の在り方が必ずしも一致するとは限らないからだ。
それでも彼女たちは自分が、「正義」であると口にする……「正義の味方」ではなく「正義そのものだ」と。
「味方」とは、「対立する一方で、特に自分が属する方、ないし自分が支持する方」を指す。つまり、「正義の味方」とは「対立するものの中で、正義に属する方、ないし正義を支持する方」ということになる。
だが、彼女たちの中で自分たちははコレではない、らしい。
つまり、「善悪」の二つないしそれ以上の勢力があって、そのどれかに属したり支持したりするのではなく、彼女たちはある種の信念そのものの具現だと口にしているのだ。
それに対して兄・暦は、まず彼女たちの言動を「正義の味方ごっこ」と表現する。
「ごっこ」とは、とある特定の動作を模倣し真似する行為だ。例えば「鬼ごっこ」は、鬼が人間を襲う行為を模倣し真似した遊びであるのだろう(たぶんだけど)。
当然、暦が妹たちに下した結論は「正義の味方ごっこ」なのだ。つまり、大本なるオリジナルとなる“正義の味方”が彼の中には在って、それと対比した上で妹たちの行動はその模倣であり真似であり……そして“偽物”だと断言したのである。
そしてそれに対して現時点で私は、暦が短期間において連続して怪異というものに遭遇し、巻き込まれ、手を差し伸べて来たから言える言葉ではないかと考えるわけである。
あの短くも、濃密で、彼の人間関係を組み替えてしまうほどの時間で出逢った人たち、出来ごと、怪異、それらが着実に暦の中で血肉となっていたように見えるのだ。もっと簡単に、『物語』シリーズを知っている人向けに言うのであれば「助けるんじゃなくて、勝手に助かるだけ」という忍野メメの言葉そのものが当てはまるのだと思っている。
暦があの数カ月の時間と怪異との邂逅の果てに得たものが、もし忍野同様に「人を助けることは出来ない。手を差し伸べたり、背中を押したりすることはあっても、あくまでその人たちがその人たち自身の力で勝手に助かっているだけなのだ」と達観した答えだったとするなら、今の妹たちの行動はそういう風に――偽物に見えるのだろう。
ひたぎ、真宵、駿河、撫子、翼。
彼女たちにはそれぞれ持っている信念や信条があって、それに対して暦は思い返せば結局一度も彼自身の信念も信条も思想も押し付けることはなかったように見えるし、忍野がそうさせていなかったようにも見える。
彼女たちはあくまで彼女たちの中にある信念や思想の中で招いてしまった怪異に対し、自分の中で(完全だったり、一時的だったりするが)決着をつけていた。
それを見続けてきた暦だからこそ、妹たちの行動を偽物といえるのかもしれない。
例えば困って挫折している人がいたとして。
本物の正義や正義の味方だったなら、きっとその困っている人を助け……救うだろう。それは一時的な救いではない。再び立ち上がる力と立ち上がり方を、(手を伸ばしたり後押ししたりすることはあっても)困っている人自身で見つけさせて“自立”させるだろう。暦がこの数カ月、図らずも忍野の下で見て来た光景は、まさしく“それ”だったはずだ。彼がコレを本物と認識する理由があるとすれば、勝手に助かっている点だろう。勝手に助かるということは、裏を返せば困っている人が自らの力で助かるということなのだから、長い目で見た時それは助けられる人のためになる可能性が高い。
でも、ファイヤーシスターズがしていることはそうではないのだろう。
彼女たちは偽物。偽物の正義の味方は、困っている人が目の前にいて困った現場を救って終わるだけ。そのあとに残るものはない。
一時的な正義の味方ごっこの限界がそこにある。彼女たちが彼女たちの“正義”で事件を解決し救っているように見えるだけ。困っている人をその手ですくい上げて終わりだ。すくい上げられた助けられた人たちが、その後の世界で自立して歩いて行けることはおろか立ち続けていられるかどうかさえ分からない結末の押しつけだ。
長い目で見た時に、人を救うことを考えた時にファイヤーシスターズの在り方は暦には“偽物”に映ったのではないだろうか。
今のところ、暦が口にした言葉の真意を私なりに探るとこんな感じ。この先、火憐や月火は怪異に出逢い、そして前回の真宵との会話が伏線になって暦はそんな妹たちに手を差し伸べる時が来るのだろう……たぶん、原作読んでないから分からないけど、話の流れ的にw
その時にどんな内容になるのかはまだまだ予想出来ないけど、でもこの「偽物」の意味が少しずつハッキリすればいいのかなと思う。
◆千石撫子と神原駿河-積極的な女の子たち-
というか、どっちも変態だけどな(笑
撫子は、本当にこう積極的になったと思う。先の暦の発言の意図含めて、この作品が『化物語』の延長線上にあるアフターストーリーなのだと思わせてくれる。
まぁ、そんな撫子の好意に対してこれといって全くどうして鈍いのが暦。もう彼女持ちであることを考えれば、他の女性に安易になびいていないのは好感も持てるし、暦の中ではそういう認識(自分がすでに彼女持ちであるということ)もあるのだろうが、あまりに撫子が報われないなぁw
撫子は暦が彼女持ちだって知らない……んだよね、たぶん。知ってたら多分こんな行動には出れないだろう、撫子の性格的に。もし撫子がその事実を知ることがあるなら、その時がもしかしたら結構修羅場になりそうな予感。
個人的にはツイスターゲームをパッケージ版には詳細を描き込んでほしい(マテコラ
そして、本作におけるエロ担当というか変態担当の神原駿河。ある意味彼女の中で「変態」という扱いはアイデンティティの一種なのかもしれない。「意外と普通じゃん」と暦に言われて動揺するシーンは、「おいおい」と思ってしまったw あそこまで自分が変態であることを必死でアピールするヒロイン級キャラクターも珍しいwww 今回は感情の起伏が激しかった駿河だが、CVの沢城みゆきさんの熱演もあってかなり面白かった。
全裸を見て暦が責任を取ると言って結婚を申し込んだときは驚いたがw 完全にひたぎのことを失念している暦。この辺りの迂闊さがこの先いろいろな意味で命取りにならなければいいが……と思うが手遅れなのだろう(笑
まぁ、一番面白かったのは因果応報で今まで真宵にしてきたセクハラを駿河から返された暦だったけど(爆
◆接地面の魅せ方-躍動感のポイントは地面にあり?-
余談になるけれど。
今回の話、演出として着目すべきは“足元”だろう。具体的には地面との接地面。冒頭の暦が妹を紹介するシーンの火憐にどこか浮遊感のある足元の演出があったのに対して、Bパートでの暦と火憐とのやり取りはバースの利かせた地面から見上げる形のカット割りを多く見かけた。撫子の家を訪れた時の暦も、そういえば完全に下からのアングルだったっけ。
そこにストーリー的な意味があるというよりは、迫力の問題だけどね。火憐が逆立ちする瞬間にその両足を持って飛び込んで逆立ちではなくブリッジに強制的にさせた暦のシーンは、バトルシーン並みの躍動感があった。加えて、地面のアスファルトが砕ける(ように比喩表現で魅せた)描写もそのシーンの躍動感をさらに高めている。
基本的に足元というか、地面に近い位置って人間にとって最もエネルギーが集約するポイントだと思ってる。走る時も、跳ぶ時も、支える時も、我慢する時も「足が地についている(いない)」「浮足立っている」などの表現が日本語にはあるように、両方の足というのは人のエネルギーや安定という部分に繋がっている部分なのだなー、とそんな描写を見ながら思っていた。シャフト作品はこういうところのカット割りやアングルが奇抜そうに見えて、意外と理に叶っていたり、堅実だったりするから凄いと思う。
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西尾維新とシャフトの相性は良過ぎて、もう他の会社では物語シリーズは制作できない(笑)
制作陣の話では、原作の台詞を一字一句カットしないよう心掛けていて、もし脚本の台詞で「は」の部分が「が」に変わっていただけでも書き直させているんだとか。
それにしても、またOP変わりましたね。
今期のシャフトは今作だけの制作なので、会社全体で集中的に力を入れているようです。
1期みたいに続きはwebで、とかにならないよう祈りましょう(苦笑)
制作陣は物語シリーズは全てアニメ化したいと思っているみたいなのですが、それまで何年掛かることやら(笑)
それと月詠さん、まさか足元に注目するとは・・・(驚)
流石、目の付けどころが違いますね!
月詠さんの考察は毎回面白く読ませてもらっています。