STAR DRIVER 輝きのタクト 総評
- ジャンル:[アニメ・コミック]
- テーマ:[STAR DRIVER 輝きのタクト]
日本列島の南に位置する南十字島。この島に流れ着いた一人の少年ツナシ・タクトは、南十字島の名家の長男シンドウ・スガタとその許嫁アゲマキ・ワコに救われて一命を取り留める。この一件があったため、タクトは島唯一の高校である南十字学園入学以降持ち前の快活さと整った顔立ちで人気を博すが、変わらずスガタ・ワコと行動を共にするようになり、特にワコには恋心を抱くように。
しかし、そんな南十字島には裏の顔があった。それは“サイバディ”と呼ばれる謎の人型ロボットが存在し、この島と島に長年居を構える名家はそんな“サイバディ”を封印するための役目を負っていた。
だが、その封印を破ろうとする一団『綺羅星十字団』が暗躍を続ける島で、ついに四つの封印の一つを宿すワコが囚われてしまう。ワコを救うべく乗り込んだタクトの前に現れる巨大な“サイバディ”。しかし彼もまた、“サイバディ・タウバーン”を操るスタードライバーの一人だった…。
BONESが送るアニメオリジナル作品。どこまでも熱く、高く、青臭く、そんな誰しもが一度は経験した青春を再びこの作品で謳歌しよう!
そんな『STAR DRIVER 輝きのタクト』の私の評価ですが...
SS
です。(SS、S、A~Dの評価)
では、詳細は続きをどうぞ。
※あくまで評価は、私的主観によるものですのでご了承下さい。
STAR DRIVER 輝きのタクト 総評
放映日:2010年10月~2011年03月(全25話)
私が視聴した放映局:TBS
総評
※評価についてはこちらからどうぞ→評価について。
シナリオ構成 評価:S
タクト・スガタ・ワコというトライアングルをベースにした物語の描き方は絶妙。さらに、こうした三人関係が今に始まったことではないことも、非常にうまく伏線として働いていた。
物語としても複雑な展開が出来ただろうが、敢えてそうせずにシンプルな構成に攻めてきた点も大いに評価したいところ。
結局のところ、私は水戸黄門みたいな作品だと思ってる。いや、さすがに例えが悪い気もするが(笑)、もっと言えば90年代のテレ東での勇者シリーズや日曜朝枠のヒーローモノは『セーラームーン』から続く少女主役の戦闘モノみたいな作品というべきか。
端的に言ってしまえば本作は「ヒーローであるツナシ・タクトがヒロインであるワコを、悪の組織が送り込んでくるヤツらから守り、返り討ちにしていくアニメ」で説明出来てしまう。それくらいベースとなる部分は非常にシンプルに作られている。
昨今の作品だと序盤はそうした展開であっても、後半になると主人公が絶望的なまでの負け方をしたり大切な者を喪ったり、あるいは序盤の展開が嘘のような勧善懲悪が崩れる展開が多々観られる。そういう展開が悪いわけではないし、もちろん私も大好きではあるのだが、本作はそういう作品群とは一線を画すものである、ということだ。
最終話においても、結局あの後封印の解かれた状態でどうなってしまうのか、という不安もあるものの、タクト・スガタ・ワコの三人は偽りなく仲が良い三人のまま、誰かが欠けることも何かを喪うこともなく完結したところはハッピーエンドと呼んでいいだろうし、良かったところだと思っている。
ご都合主義だと思われる人もいるかもしれないが、エンディングあるいはそれに向けて誰かが欠けることや何かを喪うこともまたシナリオの都合に合わせたご都合主義でもあるのだ。
そんな細かいことを気にする必要がなく、もっとこの作品では目を向けるべきところがたくさんあった。そう感じさせてくれるだけのシナリオだった。
演出 評価:S
戦闘シーンはエフェクトや構図に非常に凝っていて良かった。変身シーンやタウバーンの登場シーンは毎回使い回しのバンクが多かったが、このクオリティの使い回しならば喜んで受け入れる。そもそも、使い回すシーンと言うのは何度も使うからこそ高いクオリティを持って作られるべきシーン。例えば『覇王体系リューナイト』という作品のクラスチェンジシーンや必殺技のシーンなんかは、何度も観ても「このクオリティなら許せる」というシロモノだったわけだ。
そういう意味で本作の使い回しシーンも「許せる」と思えるシーンが多くて良かった。
心理描写はタクト・ワコをベースに、敢えてスガタを浅めにしつつ敵側の心情を深く描いていた。これもまた主役側に大きな変化がない現状では描くべきは、その回で担当する敵役やその周囲の背景を掘り下げると言う上記で上げた水戸黄門的な手法で良く安定していた。
また勧善懲悪を排す傾向の強い昨今の作品群の中では珍しく、敵側の心情を描きながら勧善懲悪を完全には排していない工夫も面白い。もちろん敵の中には憎めない理由があったり、潔い武将のような敵もいたりするのだが。
作画 評価:S
作画のクオリティは極めて高く、印象的なシーンでのカット割りや構図も良かったと思うし、そういうシーンのクオリティは背景含めてさらに高まっている。
何より1話のクオリティが高いのは普通だが、最終話のクオリティがそれ以上にまで跳ね上がると言う部分でスタッフの力の入れようやこの作品に賭けている想いと言うものが良く伝わってくる。やや誇張した部分も多いが、特に戦闘シーンの作画はこれくらいメリハリが効いていた方が観ている側も面白い。
CAST 評価:S
名実ともに一線を張る方々が、キャリア問わずに参加した印象の強いキャスト陣。そうした方々の熱い演技に支えられたからこそ、ここまで来れた作品だと最終話を見終えた後には感じることが出来る。
OP/ED/BGM 評価:S
OP・EDのクオリティは標準やや高い程度だと思っている。それよりも挿入歌のクオリティと使い方がハンパなくレベルのが高い。最終話や要所での話はもちろん、序盤は毎回のように挿入歌が流れる展開が、挿入歌の出来の良さもあって非常に良かった。
総合 評価:SS
内訳:S評価(5点)×5=25点(SSランク)
アニメオリジナル作品としては昨今まれにみる成功を収められるのではないか、という可能性を強く感じることが出来た傑作。
シナリオ構成の項目でも書いているが、物語全体としてはややこしく魅せながら実際には非常にシンプルな構図になっている部分が目立ち、どちらかと言えば王道的な展開を多く用いている作品だと思っている。主人公機のパワーアップも、三人仲良しグループの一人が敵側に回ってしまうことも、ラスボスが父親であることも、劇中ではケレン味たっぷりに演出してくれているので感じづらいが、実際には王道的な部分だろう。
昨今の作品は、奇をテラうような作品も多くなってきた。『まどか』もそうだし、『IS』や『メリー』だってそんな作品群にある。それはそれでもちろん悪くないし、私だってそうした作品たちが大好きだ。私たちが想像もつかないような展開で推し進められる怒涛のストーリーはワクワクするし魅力がある。
だが、奇をテラうことだけが必ずしも正しいのか。それが優れている証と言えるのだろうか。
本作ではまずそういうことを思わされた。シナリオ項目で書いたように、ずっと昔からアニメに限らずドラマなどでも使われてきた展開と構図で進むシンプルな物語だったが、私たちは毎週のように楽しみにし、毎週のようにワクワクし、毎週のように手に汗握ったのではなかっただろうか。
王道は、その展開が多く使われ、その展開を多くの人が認めているからこそ言われる展開であり手法だ。そうした王道から外れることが必ずしも良いことではない。王道を最後まで貫き通した本作を観ていてそう思えた。使い古された王道的な展開であったとしても、私たちはこんなにも楽しめたのだから、そもそも斬新なアイディアだけが優秀なわけではないことを私たちは再認識し再評価し直さないといけないのではないだろうか。
作品としてSSを与えるに相応しいと感じたもう一つの理由はしっかりと完結したことだ。これでもし「劇場版決定」というテロップが流れたら私は間違いなくワンランク評価を落としていた。
これは持論であるが、作品である以上ちゃんと放映が終わった段階で一つの区切りと完結を迎えさせるべきだと考えている。それが劇場版や続編が決定している作品であったとしても、だ。毎週あるいは定期的に続けてきた放映が終わるのであれば、そこには区切りや完結はあるべきだ。それが作品として最低限の部分ではないだろうか。
本作は最終話でしっかりと描き切った。宇宙を漂う半壊したタウバーンとタクト、そしてスガタ。彼らがその後どうなり、全ての封印が解かれてしまったその後の世界がどうだったのか。気になる部分やエピローグとして描いて欲しい部分はたくさんあるが、物語としてはしっかりと区切りとなる「ザメクの撃破」「スガタの救出」「トキオ(父親)との決着」を描き切っている部分が好印象。
こうして全てを描き切って出し切った上で評価を得て続編や劇場版が続くのと、最初から続編や劇場版ありきではやっぱり話の中に篭っている想いも違っていると感じている。最終話の作画や構図、楽曲のクオリティの高さを感じた方は多いだろう。それこそが、監督やスタッフ、キャストの方々が「最後の区切り」として込めた熱意の表れのはずである。
もちろん続編への可能性も残している。エンドウ・サリナ部長や副部長のこと、サイバディやタウバーンのことなどなど“謎”そのものは未だに残ったままのエンディング。全ての謎が明らかになる必要性はないと思っているのは、こうした謎が残る限り続編の可能性が残っているとも思っているからである。
この作品を観て何かを感じ取るのはシンプルゆえに逆に難しいと思っている。私自身、この作品から何かを得たり感じ取ったり出来たかと問われれば難しい。タクトのような生き方を参考には出来ないし、スガタやワコのような悲壮な決意を抱くことが出来るかと考えれば出来ないと思う。
けれど、毎週観ていて観切ったところで思える。
観ていて良かった、面白かった、と。
この作品に監督やスタッフがどんなメッセージや想いをこめていたのかを汲み取れなかったのは、考察をメインとしているBlogの管理人としては悔しいところではあるが、それを補って余りあるほど純粋に楽しめたと言う事実がとても大切なのではないか、と感じることが出来た。
続編への期待は半々かな、正直(苦笑 ここまで出来が良いとね。タイトルから行けば『STAR DRIVER』の冠だけ残して『輝きのタクト』の部分だけを変えればいいわけだから、謎も残っているし可能性はあるかな、と思っている。
おまけ
ベストキャラTOP3
1位 ツナシ・タクト
主役を1位にするのは異例w でもそれくらい彼の「青春を謳歌」する姿勢は主人公のあるべき姿の一つとして観ることが出来たし、最後まで見捨てず諦めない彼の姿勢は一つの感受すべき教訓なのかもしれないと感じた。
2位 エンドウ・サリナ
個人的にツボだった、ということが大きいが、何気に物語に深く携わっていそうな予感が良い。彼女や副部長、サイバディや封印された経緯の謎など、多くの謎を残した本作だが……これらが明らかになる日は来るのか?
3位 ツナシ・トキオ
最後の最後まで悪役であり続けたこと、あり続けさせたことにまずは感謝したい。彼が愛すべき、あるいは共感できる悪役にならなかったことで、この物語は最後まで勧善懲悪で進むことが出来たのだと思っている。悪役キャラで嫌いなキャラではあるが、同時に彼がいなくなってしまうと他のキャラは共感出来てしまう敵も多くなってしまうので、いなくてはならないキャラクター。
- at 20:51
- [アニメ(放送中):総評(カテゴリのない作品)]
- TB(2) |
- CO(2)
- [Edit]
NoTitle
スタドラが終わってしまった勢いで、感想とも呼べないような文章を書いてしまったので久しぶりにトラックバックを送らせていただきました<(_ _)>
最終回は確かにまとめきったとは言えないかもしれませんが、一つのお話の終着点としては最高だったと思います。
人を死なせないロボットアニメは私は初めてだったんですが、相手パイロットを殺さなかったからこそ今回全員のアプリボワゼに救われた結果となって、改めていい作品だったなあ、と思ってしまいます。
正直今日見るまで尺が足りるのか分かりませんでしたが(笑)、いい最終回(二期決定、とか劇場版とかに逃げずに)でよかったです。
ホスト部(監督と脚本の方がスタドラと同じアニメ)でも、最終話のBパートだけで話をまとめきった実績があったのでそこまで心配はしてませんでしたがw
月詠さんの総評にうんうんと頷きつつ、失礼します。