伝説の勇者の伝説 第16話
『微笑まない女神』
≪あらすじ≫
勇者の遺物探しを一旦終えてローランドに帰って来ていたライナとフェリス。ライナは、偶然知り合い匿うことになった、自分と同じ複写眼を持つ少年アルアと彼を慕うククと言う少女を引き取ったエリス家へと顔を出す。
エリス家は、勇者の遺物探しの旅で相棒となったフェリスの実家。フェリスや、彼女の妹イリスの異常な身体能力から家系の秘密を看破するライナだったが、それ以上の秘密を彼女らの兄・ルシルから感じ取る。
一方、忌破り隊のルークや、今やシオンの汚れ役を担うまでになったミランはそれぞれライナの危険性を確信し、ライナをシオンやローランドから遠ざける為の策を画策する―――
≪感想≫
フェリスの本質、そしてライナの本質を現わしていた良い回でした。今回は考察が長いので、追記にも考察を。
自分の存在
シオンにとって、幼いころの母の存在やライナとの約束が王として今の自分を支えている。特にライナの存在そのものが、シオンにとって心の中で最も大きなウェイトを占めている。過言ではあると思うが、ライナの為に王に成り続けている、とさえ取れる節があるくらいだ。
その者にとって支え、と言うことは、その者にとって大きな意味を持つモノと言うこと。
ライナの場合、この大きな意味を持つモノは自分の存在だ。
複写眼を持って生まれたが故に、彼はその生を多くの者たちから疎まれ続けた。生きている意味すら無いと言われ、その命も人生も玩具のように扱われてきた。
だからこそ、ライナは自分の存在を認め受け入れてくれる者たちに、知らず知らず惹かれていくのである。
キファ、ミルク、フェリス、そしてシオン。
彼が守りたいと思う者は、皆彼が“生きること”を認め、その存在を受け入れてくれた者たちだけだ。人間としてそれは至極当然だろう。そうした者たちがライナに取って唯一と言っていいコミュニティであり、それを守りたいと願うのは至極当然だ。
そんな中で、こっそり送られてしまったシオンからの忌破り隊への命令書。
それは王として形式上やらなくてはいけないことなのだろう。シオンにどれだけの想いがあろうと、ライナは複写眼を持ち、自国の魔法を持って許可なく国外に出るわけだから(※表面上、勇者の遺物探しは特命であり、極秘裏のものと思われる為、一般的には国外逃亡と変わらない)。忌破り隊を追撃として送ったのも、そうした背景があるのだろう。
だが、例えそれをライナが理解しているとは言え、それを納得しろと言うのは酷だ。
自分が命を張ってまで国外で遺物探しをしている親友が、自分の知らないところで自分を殺す許可証を出しているのだ。そこに如何な理由があったとしても、それを「仕方ないね」の一言で受け入れるなど難しい。
まして、ライナは複写眼を持って生まれた故に、生来その“生”に誰もが否定してきた。周囲から死ぬことを望まれたと言っても良く、そんなライナが例えどんな理由があろうとも、そうした命令書が出されることは、他の人たちが思う以上にトラウマなのだ。
そして、そのトラウマがライナにとって複写眼の暴走と言う別のトラウマを誘発させる。
自分が傍にいたせいで死んだ者たち、人生を狂わされた者たちを思い返せば、ライナは自己嫌悪へと陥る。ライナは自分の“生”を求め、“生”を認め受け入れてくれる人たちを守りたいと願う一方で、そうした複写眼暴走による結果から自らコミュニティを放棄する傾向にもある。
スイたちに襲われて暴走した時、ライナはフェリスの「化け物じゃない」と言う説得によって自我を取り戻しかけた一方で、暴走が沈静化した後にライナはフェリスに自分の下から去るように告げた。ライナはそうした、感情を常に併せ持つのだ。大切なものほど遠ざけたい、と言う想いと言い換えられるかもしれない。
そして、そこでこの項目の最初の部分へと戻る。
ライナに取ってシオンたちが大切で守りたいと願った理由は、その人たちが自分が“生きること”を認め受け入れてくれたからだ。だが、もし、そうした人たちが受けれいてくれないのであれば、ライナは守りたいと願うだろうか? あのコミュニティを維持したいと願うだろうか?
その思想にややすれ違いは見えていたが、しっかりと合致していたはずの二人の想い。だが、ライナはこれをきっかけにシオンから離れていくのかもしれない。そして、ライナがシオンから離れると言うことは、シオンが王である意義を大きく損なうことになる。今、確実にオーバーワークのシオンを支えていた大支柱が消滅することだ。
そうした果てにライナはどこへ行くのか、シオンはどうなってしまうのか。そして表面上はローランド王を守る為に存在するエリス家の命令があったからこそライナと一緒に遺物探しをしていたフェリスは、ライナを選ぶのか、それともシオン(ルシル)を選ぶのか。
今回は今後の行く末を大きく左右する転換点となる一話だったと言える。
続きは追記からどうぞ。
異常な能力の代償
フェリスの過去。そこには二つの要因があったと言える。
エリス家は、どうやら代々近親者が交わることによってまずは家系として才能を維持していたようだ。我々が知識として有し、あるいは本能的に感じ取って近親者とは子を設けないようにしているのは、簡単に言えば遺伝子上、近い遺伝子を持つ者同士による交配は問題を持つ子が生まれやすいから(絶対ではない)。
その一方で、迷信なのか真実なのか、古来からその一族特有の才能や能力を維持しようと外部からの血縁を一切混ぜずに、そうした問題を孕みながらも一族だけで交配させ子を残す家系がある、と言うことも存在する。
そうした中でエリス家は、後者を選択し、且つ前者のような不安が特に顕現していないケースの一つなのだろう。何が理由であれ、代々ローランド王を守る剣の一族と呼ばれるのであれば、長い歴史の中で圧倒的身体能力と剣術によってローランド王を幾度となく救った結果があったはずであり、ならばそこにエリス家の遺伝子には圧倒的身体能力を得やすい遺伝子があるのかもしれない。
そして、その中で過酷な虐待にさえ近い訓練によって遺伝子を開花させるのだろう。もしかしたら、それは火事場の馬鹿力と呼ばれる自身の肉体にかかっているリミッターを意図的に外すことを学ぶことなのかもしれない。そうなると、訓練とは呼べないような過酷さがなければそうした部分の習得は難しいのだろう。
それらを前提として起こったフェリスの強姦未遂事件。話から察するとフェリスらの親は、それぞれ兄妹のようであり、兄妹で関係を持つことによって三人の子を得たようだ。そして、今度は親子によって関係を持つことで能力を持つ子を生み出そうとした。それを阻止したのは、兄ルシル。最強と言われた自らの父を超える圧倒的な力と、そして現在においてライナすらも畏怖させる力を見せるのは驚いたし、どこか納得がいった。
初期においてあのフェリスが異様にルシルの命令に忠実だったことに疑問を持っていた私だが、その理由はここにあったのだろう。フェリスの為に自分の両親すら殺害するルシルの想い、最強と呼ばれる両親すら圧倒した力への畏怖、その手を血に染めてまで守ると言う意思。
フェリスに内在する想いは複雑だろう、と思ってしまう。
ルシルに対して、感謝、愛、畏れ、恐怖、尊敬……どれほどの感情が複雑に絡み合っているのだろうか。そう思いながら、これまでのルシルの命によって奔走するフェリスを思い返すと、また違った感覚が芽生えると言うものである。
そんなルシルは何者なのか。
人ではない、と言うが実際に人として生を受けた以上人であるはずである。そこで後天的に何かが付与されたことになる。フェリスの父親が言った言葉を思い返せば、エリス家には“何か”がある。その“何か”を具体的に言いあてることは出来ないが、それはシオンが王になるときに触れたモノではないか?
そうなると、シオンもすでに人外となってしまうが、そうした部分は見えない。ライナが「ローランドから出れないんじゃないか」と推理したように、ローランド王が代々必ず相対してきた“ソレ”とルシルが実は同化することで、圧倒的な力を得ている、とも考えられるが……。
そう言えば完全な余談だが、フェリスらの両親役が子安武人さんと伊藤美紀さんってのは豪華過ぎじゃないだろうかwww
方々の思惑
忌破り隊のルークは、ライナをミルクとローランドから遠ざける為にシオンからの命令書をライナへと渡した。誕生日会と言う生誕を祝うパーティへの招待状でありながら、中に入っていたのはその“生”を否定する文章なのは、正直笑えない皮肉である。
ルークがそこまでミルクを想うのは何故なのだろう。確かにミルクはシオンの前でも堂々と、この忌破り隊の任に就くことを誇りであると宣言したわけだが、その裏にミルクがシオンを想うと言う動機があるのは明白だ(だからこそ、シオンもミルクを忌破り隊に命じたわけだし)。
天性のミルクの明るさなのだろうか。隊のメンバーを家族同然と慕うのだから、その“温かさ”を守ろうとこうした工作に出るのも無理はないのだろう。
その一方で、こうした工作行為はそれがバレた時の危険性を孕む。もちろん、バレなければ良いと言うわけでもあるのだが、話の展開としてバレてしまうのだろうな、と思う(笑
そうした時にミルクは何を選ぶのか?
本文でも書いたように、ライナがシオンたちとのコミュニティを放棄した時、ライナだけでなく、シオン、フェリスそれぞれにも大きな分岐点に出くわすことになる。
それと同じように、ミルクもまたこうした事実を知った時に、分岐点に出くわすことになるのだろう。
想いを寄せるライナを選ぶのか、家族同然の部隊を選ぶのか。
前に感想でも書いたような気もするが、こうした工作がされてしまった以上、ここももう避けられないような展開な気がする。
一方、ミランもまた何か画策している模様。その画策のカギは、ミルク? ミルクの存在は、ライナがローランドと言う国を裏切り離れていかないようにする為のライナへの楔だ。だから、彼女を殺害することでその楔を解き放とうとしているのだろうか?
確かにタイミングとしては最悪だろう。ミランは知らないだろうが、シオンの命令書を見たことでシオンに対してさえ懐疑的になっている今のライナに、ミルク死亡の報を知ったならば、自分が居ることで周囲を不幸にするとして、ますますシオンやローランドから遠ざかろうとする。
ライナにとっては厳し過ぎる状況だが、そんな中での一筋の光明は、キファの存在になるのだろうか? 彼女は今でも複写眼についての伝承を求めて世界を旅している。それによってキファは何を求めているのかは解らないが(複写眼を暴走させない手段の確立?)、それが誰の為、とはさすがにわざわざ問う必要もない。
今のところ、ライナのローランド離脱と言う仮定が実現したとしても、大きな選択を問われないのはキファくらいなものだろう。ライナもそろそろ傷心だし、ガスタークを目指すのも良いが、ライナと再会しないものだろうかσ(^◇^;)
余談
複写眼とは何なのだろう。
発動すると暴走して死ぬと言われる複写眼だが、アルアは普通に自分の意思で複写眼を制御している(制御していると言っても力の全てではなく、表面的な数割程度だけなのだろうが)。もちろん、そんなことは今さらではなくて、クク救出の時から解っていたことなのだが、こうして改めて「ちょっとアレ取って」程度の軽さで「複写眼使って」と言われて使えてしまう状況に違和感がw
その一方で、アルアの複写眼では見えないモノが、ライナの複写眼には見える。ライナの複写眼の特殊性はすでに暗示されている部分ではあるが、改めて複写眼を持つアルアが比較対象となることで、ライナの特殊性を浮き彫りにさせたと言えるだろう。
スイとの戦いを振り返ると、ライナの複写眼は魔法だけでなく存在そのものを解析し干渉出来るようだし、あの建物を解析した際に、シオンも触れたと言うエリス家に眠る“何か”に触れてしまったのだろうか?
第17話『殲滅眼(イーノ・ドゥーエ)』
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NoTitle
いつも楽しく読ませていただいています。
自分は中学時代に伝勇伝の原作を読んでいて、今は懐かしさでアニメを観ているのですが(年がばれてしまう(笑))、
>ローランド王が代々必ず相対してきた“ソレ”とルシルが実は同化することで、圧倒的な力を得ている、とも考えられるが……。
>スイとの戦いを振り返ると、ライナの複写眼は魔法だけでなく存在そのものを解析し干渉出来るようだし、あの建物を解析した際に、シオンも触れたと言うエリス家に眠る“何か”に触れてしまったのだろうか?
正直、ものすごく驚きました! 原作を読んでいないとは思えないほどの的中ぶりです。
あまりに的を射た推論だったのでついコメントしてしまいました。
これからも記事を楽しみにしています。失礼しました。