世紀末オカルト学院+アニメノチカラ 総評
1999年、長野県松代にある日本のピラミッド“皆神山”にそびえたつ私立ヴァルトシュタイン学院。
ここでは何かに引きつけられたかのように次々とオカルト現象が起こる。故に「オカルト学院」と呼ばれている。
ある日父である学長が亡くなり、とある理由で昔は大好きだったオカルトを大嫌いなだと口にする学長の一人娘の神代(くましろ)マヤが学院を訪れる。そこで2012年から来たと言う自称“タイムエージェント”で元・スプーン曲げ少年として名を馳せた内田文明と出会う。
1999年7月21日、ノストラダムスの予言が的中して宇宙人が来訪、地球は未曾有の危機に対処できず人類は壊滅的ダメージを被っている。だから、そのノストラダムスの災害を発動する鍵を見つけて破壊しなければならない。
そんなことを口にする文明を、オカルトを嫌っているマヤが素直に受け入れるはずもないが、学長がその鍵を狙う者によって殺されたのではないかと知ると、渋々マヤは文明と協力してノストラダムスの鍵の探索を始めるのだが―――
アニメノチカラ枠最後の一本!
そんな世紀末オカルト学院の私の評価ですが...
S
です。(SS、S、A~Dの評価)
では、詳細は続きをどうぞ。
※あくまで評価は、私的主観によるものですのでご了承下さい。
世紀末オカルト学院 総評
放映日:2010年06月~2010年09月(全13話)
私が視聴した放映局:テレビ東京
総評
※評価についてはこちらからどうぞ→評価について。
シナリオ構成 評価:S
オカルトと言う如何にもなB級臭が漂うタイトル。アニメノチカラ枠と言うことで個人的にとても期待していたが、その期待に応えてくれた作品だと思う。
シナリオは13話分フルに使って構築されており、中盤までは共通パートをこなしながら、主人公とヒロインでそれぞれ担当話を終盤に別で描くことで、それぞれのキャラクターが抱える問題を引き立たせていたと思う。
演出 評価:A
丁寧な演出とド派手なバトル演出を両立させていた。いきなり魔法バトルになった時は驚いたものの、広義で捉えれば魔法もオカルトの部分なのだし。
心理描写はしっかりと2話1編構想とすることで描かれていた。マヤの葛藤に対する解決がややあっさりだった部分も否めないが、それでも丁寧にしてきた方だと思う。
作画 評価:A
比較的安定した作画。奇妙なUMAたち。マヤの絶対領域(笑
とりあえず、アニメーションとしては美化されがちな部分で言えば“肉感”がしっかりしていたところに好感が持てる。ムチムチ感と言うのだろうか。そうした肉質の表現には拘っていた作画だと思う。
CAST 評価:S
とにかく脇役の固めた方が凄い。子安さんにJKを頼む辺りが凄いと思うwww
新人もおり、中堅、ベテラン揃い踏みであって良かったと思う。一つの作品として人気と実力を兼ね備えた中堅、根強いファンの多いベテランで固めるのは簡単だ。
だが、業界として新人を発掘育成していかないといけないことを考えれば、わずか2話であったとはいえ、あかり役の水瀬いのりさんを出すなどバランスのいい布陣であった。
OP/ED/BGM 評価:S
OP・ED共に優秀で頼もしかった。もう少しBGMが『ナイトレイド』ほど盛り上がりを見せてくれればなぁ、と言うのが本音。
次回予告で、日笠さんや茅原さんら歌唱力の高いキャストに99年の流行曲をカバーしてもらうと言う中々のアイディアだったと思う。まぁ、それが全てDVD特典になってしまって、金欠者にはどうにも手が出しにくいものになってしまったのは悲しいが。
総合 評価:S
内訳:S評価(5点)×3+A評価(4点)×2=4.6点。アニメノチカラ枠に対する期待値+0.1点で合計4.7点 S評価=4.9~4.5点)。
アニメノチカラ枠としては総合的に観て一番纏まっていた話。キャラクターで言えば、昨今主流なのは『ソ・ラ・ノ・ヲ・ト』、個人的な好みや楽曲で言えば『閃光のナイトレイド』だが、総合的には本作だろう。
それがこの作品に対する評価への直結でもある。
良く纏まっていた。
それが最も簡潔な評価と言えるだろう。
神代マヤと内田文明と言う二人の人間ドラマとしても完成度は高く、そこにファクターとしてオカルトが散りばめられていた。
面白いし、何より考察のし甲斐があった。
個人的に考察のし甲斐があるアニメは、その先に謎があり、その謎に対する興味があったればこそ。そうした部分を出してきたアニメと言う意味では、久々に熱くなれたアニメだったと言える。
-アニメノチカラ 総評-
放映当初、「『アニメノチカラ』枠だから」と言うとんでもない偏見で作品を観ている人が多くて驚いた。如何に今の視聴者層が、既存の原作のあるアニメに良くも悪くも毒されているのだと個人的に痛感した。
アニメノチカラに対して私は全ての作品対しておおむね肯定的である。それは贔屓目と言うか、オリジナルアニメの稀少性と製作に伴う労力の莫大さをどことなく感じ取っているからだ。
そもそも、この企画を立ち上げたこと、そのプレッシャーのかかる企画に参加していること自体評価したいとさえ思う。
『ソ・ラ・ノ・ヲ・ト』『閃光のナイトレイド』そして本作共に、監督始めスタッフたちクリエイターがやりたいとこと、描きたいことをとにかく詰め込んだ作品だったと思う。
『ソ・ラ・ノ・ヲ・ト』では『けいおん!』に近い日常性を描きながら、その合わせ鏡のように裏側では戦争が起きている現実。それは私たちの現実でも同じことだろう。日本と言う国に居るからこそ日常と言う幸せを享受しているが、中東含めて世界各地ではまだまだ紛争の続く地域は多い。
そうした部分を隠喩として散りばめられていた気がする。
『閃光のナイトレイド』はもっと野心的で、日本の過去の歴史にメスを入れるような作品だった。野心的すぎて好悪がさらにハッキリ分かれてしまい、難解なストーリーや状況理解の難しさからかなり多くの視聴者からは倦厭されてしまった感じも否めないが、その野心的な挑戦は評価したい。
作品としても、『“個”か、“全”か』と言う部分が問われた作品だったように思えるし、楽曲としては三作の中でも秀逸だっただろう(特にBGM)。
『世紀末オカルト学院』では、一つの謎に対して追いかけていないように見えて本当に追いかけていない(笑 実際にはその側面で並行して走っている人間ドラマの方がメインで、人と人の絆(特に親子の絆)を中心に描かれていたと思う。
三作の中ではとても良く纏まっていた作品だろう。
統一性はまるでない。
そこにクリエイターが描きたいものを描きこむと言うアニメノチカラの野心的意欲が垣間見える、良い企画であった。それだけに、結果が伴わなかったことが非常に残念である。
-今後のアニメ業界を占った企画-
アニメノチカラと言うは、もしかしたらこの業界における最後の一石を投じたのかもしれない。その結果はもちろん最悪の方向へ傾いているわけだが。
アニメオリジナル作品と既存の原作があるアニメ作品では、そもそもに出来に差が生じてしまう。既存の作品は完結していようが未完だろうが、すでにあるものに対して手を加えていく肉付け作業であり、骨格そのものは原作で確立されているわけだから。
もちろん、骨格作業よりも肉付け作業が劣っていると言うわけではない。逆に原作があることが足枷となってしまって、アニメ化に失敗するケースも多々あるわけだから、どちらにも、どちらにしかない難しさを抱えている。
それはともかくとしても、ストーリーとして好評を得ている作品をアニメ化するわけだから、一から全てを作る作品としての差はどうしてもあるものだ。
作品はストーリー含めて全てが手探りであり、視聴者がどう捉えるのかも解らないまま完成まで持っていかないといけないわけだから。
個人差はあるけれども、あまり評価の高くないアニメノチカラ枠。その製作費回収の大部分をDVD売り上げに頼らなければいけないところもだいぶ厳しいが、特に『閃光のナイトレイド』での厳しさは言葉に出来ない。
アニメオリジナル作品としての地位や存在として、ラノベを中軸とした原作有りアニメがその大半を占める業界において、一石を投じてくれるものになってくれると信じていたが、作品の出来が思いのほか視聴者の求める波長と合わなかったこともあって、低調な評価によって逆に今後アニメオリジナル作品枠が削られることは目に見えているだろう。
結局、アニメオリジナル作品は成功し辛い
そんな悪い手ごたえを与えてしまった気がする。
今後、アニメ業界は独立出来る業態ではいられなくなる。コミックやラノベ、ゲーム、雑誌の誌上企画と言った分野で成功した作品でなければ、こちらの分野に進出することは出来なくなるだろう。
それはアニメ業界がそうした業界の上に立つのではなく、そうした業界が土台になければ成功しない業界へと変質を始めた、と言うことだ。
古くから別メディアにおける成功からアニメ化と言うケースは多かったが、アニメオリジナル作品もあって、アニメ枠からコミックや小説と言った別メディアへの展開があるから、アニメ業界とコミック業界、ラノベ業界は相互に互いを補完し支え合えた。
だが、この先アニメ業界は他のメディア業界に対しておんぶされ抱っこされないとやっていけない状態になっていく。
もちろん作品としての評価は人それぞれであるべきだし、私だってこの作品に対して最高ランクのSS評価をつけていないように完璧な作品だとは思っていないし、スタッフにはもっともっとアニメオリジナル作品枠として最高の作品を提供して欲しかった。
このアニメノチカラ枠も、『世紀末オカルト学院』が今後どれだけ売上高を伸ばせるか不明だが、先の二作品では思うように伸びていないはずであり、シリーズとしては頓挫気味であったと言えるだろう。
売り上げと評価は直結しない部分もある(自分含めて1本5~7000円は軽くするDVDを無尽蔵に買えるほどの人間なんて文字通り一握りいるかいないか)。
だが、初期の「『アニメノチカラ』枠だから」と言う意見の多さに(前二作が健闘出来なかったのが理由とはいえ)、もう少し寛容に作品を観ることは出来なかったのだろうか?と問いたい。
『アニメノチカラ』枠ではアニメオリジナルストーリーの他、若い監督の起用、新人声優のキャスティングと今後の業界を見据えたモノであったのだから。
いや……出来ないのだろうな、と思う。
ラノベを始めストーリーもキャラクターも成功したもののアニメ化は非常に面白いし魅力的だ。こんな記事を書いている私だってそう感じているし、楽しんでいる。良くも悪くも私たち視聴者は目が肥え過ぎてしまったのかもしれない。
そんな元々人気のある作品たちにオリジナル作品が相対する為には、当然それだけの資質や才能を持つクリエイターが不足している気もするし、育てられる環境にもなっていない気がする。もちろん問題はオリジナル作品を評価しない私たちだけでなく、オリジナル作品で最も大切な“創造性”を持つクリエイターの多くがアニメ業界を選択せずに、ラノベやゲームのシナリオ、コミック業界へと流れてしまい、アニメ業界が育成し切れなかった部分も多分にあるとはいえ、である。
この先、ますますアニメ業界としての衰退は目に見えたも同然である(人気作品をアニメ化すればいいと言う発想は業界としては生き残れるだろうが、アニメだけで作品を立案・提唱が出来ないのであれば、アニメ業界単独で自立出来なくなるのでそれは業界としては衰退である)。
それが残念でならない。
本作の売上次第によっては、まだアニメオリジナル作品の火が残り、それがアニメ業界が他のコミック業界などと並び立つくらいに再興出来る要因になってくれることを今はただ祈るしかない(自分でも手が出せる範囲で購入する程度しか出来ないが)。
おまけ
ベストキャラTOP3
1位 JK
いや、JKでCV子安武人氏ってところでもうダメだろ。しかもなんかノリノリだったし(笑
2位 内田文明
人間として非常にリアルな感情を持つ主人公だった。2012年に一般的に居そうな周囲の状況にトコトン流されてしまう青年。その青年が、一歩自分の意思で踏み出すまでの長々とした過程は良かった。
3位 川島千尋
最後の最後でやっぱり死んでいたのね・゜・(ノД`)・゜・ でも、12話でしっかり見せ場を持っていたし、あそこまで純真な愛と言うのはアニメでは久々に観たかもしれない。
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