劇場版 機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer- 感想・講評 第四回
- ジャンル:[アニメ・コミック]
- テーマ:[機動戦士ガンダムOO]
感想・講評 第四回『イノベイターとは何だったのか』
またしても核心(笑 でも、そんな大したことはしていません。イノベイターとは何だったんだろうと言うところを、例を挙げて一つ一つを見直していく作業をしただけなので。
個人的に面白かったのは、最後でやった『劇中キャラでイノベイター化したのは誰か?』と言う考察です(爆
では、さっそく考察です。
◇イノベイターとは何だったのか◇
イノベイター。革新者とでも言うべき言葉ですが、劇中では簡略化した時に『進化した人類』と捉えられていました。
では、イノベイターとは何なのか。劇中のディヴァイン似のイノベイドの言葉や劇中のことを思い出しながらうろ覚えだが、ピックアップ。
・脳量子波の使用(「状況判断力」「空間認識力」の著しい向上)
・細胞の老化抑制(いわく「理論上、常人の倍近い寿命がある」)
・脳量子波を利用した相手の心理状況の把握(脳量子波による意識拡大)
・GN粒子を介した意識拡大、および高濃度GN粒子散布領域下における意識共有
こんなところだろう。
ちなみに『脳量子波を利用した相手の真理教上の把握』は、デカルト・シャーマンがカティ・マネキンの思考を読み取ったところからの推察です。
意思感知は、2ndシーズンで刹那も行っていますが、あれは高濃度GN粒子領域下(ダブルオーライザーのトランザム時)に限定されており、さらに刹那が相手を感知すると同時に相手も刹那の声を感知しているので、それはどちらかと言えば意識拡大や最後の意識共有に近い。
そうなると、デカルトがやった思考の読み取りは、1stでアレルヤとソーマが互いを感じたように、劇場版で刹那がデカルトに呼びかけたように、あるいはイノベイター因子を持つものがELSを感知したように、脳量子波によって相手の脳量子波に干渉したのではないか、あるいはGN粒子を介さない意識拡大かと。
話を戻して、おそらく定義されているイノベイターとは上記四つの要件を満たし、ヴェーダがイノベイターと認定した者のことだろう(劇中ラスト、人類の40%がイノベイター化したイノベイターはたぶんこれ)。
ここだけ見れば、イノベイターとはまず『脳量子波の増大させ利用が出来る人類』であり、同時に『細胞の抑制老化によって長い寿命を持つ者』である。
細胞の老化抑制がどうして成るのかは不明だが、脳量子波による、人間のブラックボックスである脳の一部が解放された結果、人間としてのスペックそのものが引き上げられた影響だろうか。
だが、これはあくまで平均的なイノベイター像である。簡単に言えば、刹那はこれに当てはまらない部分が有る可能性もあると言うこと。なので、脳量子波が使える人物を中心に、イノベイターである部分とそうでない部分も観ていこう。
▽刹那・F・セイエイ
・真のイノベイターと呼ばれ、意識共有下におけるハブ化が可能
この一点においてのみ刹那は平均的イノベイターと差があると同時に、この差が「真の」と呼称される要因なのだろう。劇中で、刹那のように自身を介して他者の意識同士を繋げるハブ化を行っている者はいない(2ndのトランザムライザー時の意識共有と、沙慈とルイスなどのように一部人物たちの意識を、自身をハブ化して繋げた)。
明言されたり、描かれていないだけでもしかしたらイノベイターなら出来る可能性はもちろん秘めているのだろうが、描かれていない以上、そこは何とも言えない。
ただ、刹那はそれを可能としているわけだから、そこは通常のイノベイターとは一線を画す部分なのだろう。
肉体変異を受け入れたのも刹那であるが(刹那のメタル化)、メタル化は劇中に女子高生だと思われる少女も半メタル化しているので、それは刹那固有の能力とは限らない。
▽アレルヤ・ハプティズム、マリー・パーファシー
・“反射”と“思考”を司る人格がそれぞれ分離
・肉体強度、能力の飛躍的な向上
この二点がイノベイターとは違う点。そもそも超兵である彼らは、イノベイターになれるのかどうか、と言う疑問もあるのだが、脳量子波が使えるので一応考察しておこう。
肉体強度やその能力は超兵としての外科手術を受け、高度な軍事訓練を幼少期からつまされた結果である。
有る意味で後天的に人為的なイノベイターを外科手術で作り出すような作業に近い(イノベイターは外科手術ではなく遺伝子レベルで人為的に作られたもの)。
▽ティエリア・アーデ
・ヴェーダへのアクセス権
・意識のデータ化
・ナノマシンによる体細胞維持
もとよりイノベイドである為、これはティエリアの特性と言うよりもイノベイドの特性と言えよう。
考えてみれば、イノベイターは誰一人としてヴェーダへのアクセスは出来ていない。真のイノベイターと呼称される刹那ですら行っていない。
そう考えると、ヴェーダへの生体アクセス権を有することは、遺伝子レベルでヴェーダとの共生を組み込まれているであろうイノベイドの特権なのだと思う。それは意識のデータ化となり、ティエリアやリジェネ、リボンズのように意識データをヴェーダに保存することで、器である生体端末にデータを送れば幾らでも復活できる、と言う特性に繋がる。
ナノマシンによる体細胞維持によって彼らは文字通り老化することはなく、それもイノベイターとの違うだろう。
▽ルイス・ハレヴィ
・GN粒子とナノマシンによる人為的なイノベイター化
ルイスに関してはこの一点。肉体的に覚醒を果たせなかったことが、イノベイターになれなかった要因なのだろう(肉体的にはGN粒子毒性への抑制と言う意味もあるだろうが)。
こうした例外もいる(イノベイターではないが)。
その中で“イノベイターとは何だったのだろうか”と考えると、安直な答えだけど、やっぱりそれは“解りあえる可能性を高めた人類”なのだろう、と思う。
それはある意味、人の進化の正当な形だろう。
人はコミュニケーション手段を進化させてきた。それは身振り手振りのボディランゲージであり、記号であり、そこから言語へと移り、言語は多様な様相を見せ、新しい言語を生み出し、今度はその言語を伝える媒介を声から文字に、文字は竹や木から、紙、電子情報などと進化を果たしていく。
そう考えると、人が脳量子波と言う自分自身から生み出すものを媒介として他者とコミュニケーションを図ろうとする姿は、こうした進化の行きつく当然の行く先だったように思える。
イノベイターとは何だったのだろうか、と言う問い。
それはこの作品を観ていれば誰もが多かれ少なかれ考えることであるが、その存在は宇宙世紀やXにおけるNT、SEEDにおけるSEED因子に当たる部分の為、明確な答えは恐らく出ないと思う。
明確な答えが出せるのであれば、先に挙げたガンダムシリーズで答えを出している。
でも、宇宙世紀やXでも、SEEDでも人類の革新の為の因子であったはずのNTもSEEDも、戦争をする上で有利な因子にすり替えられてしまい、明確な答えは今でも出ていませんし、生涯出ないものと思われる。
なので、イノベイターと言う考えも明確な答えなど出ない、と言う前提を皆様にも忘れないでほしい。たぶん、“イノベイターとは何だったのか”と言う問いに答えを出すのは視聴者の、一人一人の皆さまだと思います。誰もが“イノベイターとは何だったのか”と考えて出した答えが、その答えの一つになるのだと思う。
そんなに簡単なことではないし、考え切れないかもしれないけれど、ぜひ一度くらいは“何だったんだろう?”と思考を巡らせて、各々の見出したイノベイターへの答えを得てほしいと思う。
◇50年後の世界でイノベイターに成れたのは誰か?◇
50年後、全人類の40%はイノベイター化している。
確定しているのは、
・クラウス・グラード
(ラストでイノベイターのみで構成員を組む外宇宙航行艦“スメラギ”艦長に)
・劇中でELSと融合した女子高生(同じくスメラギに搭乗)
の二人のみ。
せっかくなので、劇中キャラクターがイノベイターになれるのかどうかを考えてみる。
-ソレスタルビーイング-
そもそもにして、ソレスタルビーイングのメンバーが最もイノベイター化する可能性が高い。それはイオリア計画を遂行しているからではなく、2nd24話で刹那が発したトランザムバースト空間にいた人物がイノベイターとして覚醒を果たしている(劇場版パンフで水島監督が明言済み)。
当然、ソレスタルビーイングは2年前のイノベイド軍との決戦で中核におり、トランザムバースト空間の中核に居て、その高濃度GN粒子の影響を受けているのだから、イノベイターとして覚醒して有る意味当然と言うか必然なのだろう。
ロックオン、スメラギ、ラッセに関してはさらにそのトランザムバースト空間での意識共有や意識拡大、GN粒子による体細胞の復活を経験している。GN粒子による変革を彼らは受け入れ、経験しているわけだからイノベイター化する可能性はあると言えるだろう。
フェルト、ミレイナ、イアン、リンダに関してはそうした描写がなかったので何とも言えない。ただ、覚醒していてもおかしくない空間にいた経験を持つわけだから、他のキャラクターよりはずっと覚醒する可能性は高いと言えるだろう。
個人的には、フェルト、ミレイナはイノベイター化して可能な限り若い状態で50年後、帰還した刹那とティエリアに逢って欲しいと言う想いもある。
アレルヤとマリーは正直読めないのだ。ティエリアにも同じことが言えるが、どちらもイノベイター化しなくても脳量子波が使えてしまうのだから、新たにイノベイター化して脳量子波を目覚めることがあるのだろうかと思ってしまう。
その観点で言えばアレルヤとマリーはイノベイターとして覚醒する可能性は低いが、それは同時に逆のことも言えてしまうのだ。
つまり、人間と言う生物としての進化であるならば、それは超兵であっても問題なく、逆に脳量子波をイノベイターになる前から使えていることは、捉え方次第ではイノベイター予備軍とも捉えられるので、その経験値から覚醒する可能性もあるだろう。
-地球連邦-
ロックオンらの2ndシーズンの経験値から考えると、グラハムやアレハンドロ(特にグラハム)は経験値が多い分、イノベイター化出来る可能性があっただけに戦死は非常に残念だ。グラハムは特にトランザムバーストではない状態で戦闘中に刹那と意識共有を果たしているので、かなり可能性は高かったのではないかと思える。
ビリー、コーラサワー、カティは完全に未知数だ。共にトランザムバースト空間にはいたが、それだけに過ぎない。ビリーに関してはスメラギと意識共有が確認されているので、他の二人よりは可能性はありそうか。
ちなみに、50年後の世界で外宇宙航行艦をスメラギと命名したのはビリーだと言っている方が多いですが、私はカティだと思っている。理由は、スメラギ=希望と言う意味が与えられていたからだ。それは、スメラギ・李・ノリエガが、カティから入った通信に対して
ス「もう少し持ち堪えて」
カ「勝機があると言うのか?」
ス「勝機は……ないわ」
カ「なに!?」
ス「でも、“希望”ならある!」
と返していたから。
そのスメラギが賭けた希望は、結果として人類を生かし、ELSを生かし、対話を可能にしたわけだから、そのことを胸に刻んだカティが、命名したと考える方がビリーが命名したと考えるよりもずっと自然な流れだと思う。
科学者ミーナはおそらくイノベイター化しているだろう。
理由はそのうち、彼女の考察をする時にでもしたいが、簡潔に言えばミーナ、あるいは彼女の一族はおそらくネーナ・トリニティへの遺伝子提供者だ。ガンダムマイスターとして遺伝子調整を受けたとはいえ、ヴェーダへのアクセスが可能な脳量子波が使えた彼女の遺伝子提供元となれば、覚醒する可能性は極めて高い。
-その他-
マリナは覚醒しない。マリナファン申し訳ないが、あの後50年経過したマリナは、人間として真っ当な老化をしていたと思う(単純計算で80過ぎ。緑内障か何かによって視力を失ったのだろうが、医療技術を考えれば生きていておかしくない)。そう考えると、細胞の老化抑制があるイノベイター化には到達していない。
まぁ、そんなことをしなくても彼女は他人と解りあう道を生まれながらに模索して実践するわけだが。
しかし、そう考えるとクラウスのイノベイターへの覚醒はおそらく晩年だったのだろうな、と思う。50過ぎ、60過ぎの年齢でイノベイター化したのだろう。
シーリンに関しては微妙なラインである。クラウスがイノベイター化したのならば、しそうなものであるが、逆にマリナがイノベイター化していないのだから、していない道理もあってしまう。
ルイスに関しても微妙なラインだが、私は覚醒すると思う。リボンズによってGN粒子とナノマシンによって人工イノベイターとされた経緯によって彼女も脳量子波が使える。おまけに、彼女はトランザムバースト空間において自らを死に至らしめようとした状況から、高濃度GN粒子によって蘇生・復活を果たしている。
この蘇生と復活は、GN粒子による体組織の変革を受け入れたとも考えられ、それは同時にイノベイター因子である細胞の老化抑制に直結すると思われる。
劇中でも意思はPTSDの症状は改善、リボンズによって投薬されたナノマシンの後遺症治療をしていると告げられている。そう“後遺症”の治療であって、ナノマシン投与によって得た力を放棄したわけではないのだ。そうなると、ますます彼女のイノベイター化はもしかしたら既定路線になるのかもしれない。
逆にかわいそうなのは沙慈か。沙慈は覚醒しない。それは、監督が明言している(笑)。沙慈役の入野さんが「沙慈は覚醒しないんですか」「うん、沙慈はダメだね」とやり取りをしたらしい(ガンダムOOエースより)。そうなると、沙慈はダブルオーライザーにほぼ常時搭乗し、トランザムバースト空間にいながら覚醒しない、むしろ極めて希有過ぎる“普通”の人なのだろう。
まぁ、考えてみれば、彼がルイスと意識共有したのは刹那がハブとなったおかげとも言えるし、トランザムバースト空間で沙慈は何も影響を及ぼされなかった(ルイスが助かったのは沙慈の想いが意識共有で伝わった可能性もあるが、基本的に無関係)。
しかし、こう考えるとルイスと沙慈の間にはもう一つ、確実に悲劇と言うか切ない結末が待っているのだろうな、と思う。SS作家さん辺りが描きそうなものであるが、ルイスが仮にイノベイターとして覚醒した場合、ルイスと沙慈は同じ時間を生きることは出来なくなるのだから。
ルイスは年齢を重ねることが遅れ、沙慈だけは普通に年を取っていく。
10年後は良いかもしれない。ちょっと老けた沙慈と若々しさを保つルイスと見えるだけだ。でも、20年後、30年後、そして50年後は?
記録上沙慈もルイスも24歳だ。そこから50年後なので、おおよそ75歳前後。ルイスの覚醒時期にもよるが、早期に覚醒した場合、ルイスは※単純に考えて肉体的に40代~50代前後だが、沙慈はもうマリナと同じくらいのヨボヨボなのだ。
それでも、ルイスはもっと沙慈よりも長い時間を生きていく……沙慈の死を看取るのはルイスであり、ルイスはその後も何十年も生きていくのだから(もちろん事故死などをこれには考慮に入れていないが)。
※あくまで単純に考えて、劇中通り、寿命が理論上二倍ならば老化抑制効果は二倍。50年で受ける老化速度は半分の25年と言う計算。
ただし、イノベイターの特性は解っていない。劇中ラストでELSと融合した少女はおよそ10代後半から20代前後の容貌をしており、イノベイターは『覚醒時点、あるいは肉体としてのピーク年齢でその肉体を維持する時間が極めて長く、幼少期の成長速度、一定時間を経過した後の老化速度は人間と変わらない』とも考えられるからである。
どうだっただろうか?
異論はもちろんだろうだろう。劇中では描かれていないエピソード的な部分であるから当然だ。でも、こうして考えてみることが出来るのも、楽しみの一つだと思うので、「あのキャラはどうだろう?」と自分なりに考えて答えを出すのも楽しいと思う。
イノベイターはNTを意識されてますから答えはなさそうですが考えるのは面白いですね
私が気になるのは覚醒するタイミング
デカルト大尉は2年内で覚醒していますが同時期にバーストを受けたクラウスはまだ覚醒していなかった点
年齢が若いほど代謝が活発だから覚醒時期が早そうな印象があります
「なりうる因子」があるならば若いミレイナが早そう…
あ、マリナの孤児達も因子があれば劇中時点で覚醒しているかもしれない(笑
あと物語が50年ジャンプしていること
全人類4割イノベ化といわれましたが果たして平和に50年経過したのか争いがあったのかも気になりますね
花と地球と月が緑の粒子で繋がってたような映像も気になる…妄想の日々です