デウス・レプリカ 第3巻
<あらすじ>
悠が入ってから唯一姿を見せていなかった、萬屋探偵事務所最強のフォワード・荻窪美弥子が、日本に帰って来た。しかも、リメイン・シリーズの一つ【リメイン・タトゥ】を引っ提げて!
空港まで出迎えに行った悠だったが、突然空港で大爆発が。テロかと思ってしまうほどの光景を前に、悠の元へ一人の少女が立っていた。
エレクシア
そう名乗る彼女を連れて空港から脱出する悠だったが、それがリメイン・シリーズの謎とGIFTキャリアの誕生の秘密に迫るモノだとは知る由もなかった―――。
<感想>
特集まで組んでおきながらあれですが、出来栄えとしてはイマイチな部類に入ってしまうような気がする。2巻の内容がほぼ関わってこない、と言うのも理由の一つなのかな。正直、1巻から2巻を飛ばして3巻を読んでも大きな問題がない。と言うか細かい部分でもあまり問題がない。せいぜい、映の存在の大きさが変わる程度だしなぁ。
なんて言えば良いのだろう……妙に味気ないような、そんな錯覚。中身はそんなことないのですよ。ヒロイン美鈴の生い立ちが見え隠れしたり、GIFTキャリアの謎だったり、リメイン・シリーズの本当の目的だったりと見どころは山ほどあるのだけど、それが完全に散発してしまっている勘が否めない。
果たしてここまで全部を詰め込む必要があったのかは疑わしいところですが、「完結するまで出版OK!」なんていう出版社も、この厳しいご時世では早々いないでしょうし、そう言った意味で「常に背水の陣」と言うことを考えれば、そろそろ出せるネタは一通り(お茶を濁す部分があったとしても)出すべきなのかもしれませんけどね。
まぁ、正直この程度なら想定の範囲内ではあるんですけどね。
魔術に魔法、超能力に護符、さらには神とか霊子エネルギーとかそんなモノがゴチャ混ぜになっているのが本作だから、まぁその観点で言えば、一つ掘り起こしてみたら色んなものがくっ付いている事態は割とありがちだしね。
問題は、登場人物の大人たちの対応だろうか。
所長こと和導しかり、荻窪美弥子しかり、さらに言えば(私は全ての元凶と想っている)悠の姉のこのえしかり、真実を徹底的にはぐらかす。ごまかす。お茶を濁す……。それが果たして、このリメインシリーズに関わる、ある種の戦争に高校生を巻き込んだ大人たちの言う言葉か、と。物語の必然性として一人くらい、全て真実を見通しておきながら、何らかの理由で言えないキャラがいてもいいかな、と想いますけどね。でも、二人は多い。しかも、どっちも本来ならば味方でなければならない二人。
結局、巻き込まれ型主人公は同時に知識・経験・実力として未熟な面がある場合が大きいから、結果としてそれを支える指南役として、全てを見知ったキャラが一人くらいいるに越したことはないわけです。デウス・レプリカもそのケースの一つ。
でも、出てくる大人・大人・大人が、揃って真実に対してお茶を濁すから、読んでいるこっちまで不完全燃焼を突き付けられている感じが強い。
そうなると、読み終わった時の残滓感覚だったり、不完全燃焼の感じだったりがどうしても残る。読み終えて「面白かった」ではないのが残念。締めくくりも取ってつけたようなものだったし。
それだけに、出るのであれば4巻の内容と出来栄えは真価を問われるはず。4巻で、この不完全燃焼さ・大人たちの不満過ぎる対応の理由付けとその結果がしっかりと出るなら、3巻がこうであった意味合いが出てくると思う。3巻の中身を無視して進むなら、3巻の意味合いが失われる。
だからこそ、大切な4巻だと信じています。
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