地獄少女 三鼎 第10話
『鏡の中の金魚』
市村和也の家庭はごくごく普通の家のはずだった。しかし、それも変わってしまった。
あのセールスマンが来てから、母は家のことよりも自分の美にだけ執着するようになり、際限なく着物を買ってしまう。そんな母をもうどこか父も見捨ててしまっている。
だから、自分が支えないといけない。アルバイトを始め、少しでも家計の助けになればと思った。けれど―――。
<あらすじ>
賽河原第四中学の一年生・市村和也(いちむら・かずや)。彼は、中学生だが早朝と夕方の新聞配達のアルバイトをしていた。家もどちらかと言えば裕福なはずの和也のアルバイトに対して、なぜか執拗に絡む御影ゆずき。それは、彼があいと契約を交わしてしまったからだった。
和也の母・君枝(きみえ)は、最近になって高い値段を出してまで着物を何着も買うようになってしまっていた。ローンまで組み、何着も買う母親の姿、さらにそんな母親を言葉巧みに言いくるめているのは他ならぬ着物売りの業者・斎藤幸広(さいとう・ゆきひろ)であった。
加えて、和也の父・芳雄(よしお)はそんな妻の姿を知ってか知らずか、ロクに相手もせず、家に帰ってもせいぜい息子である和也のことを気にかけるだけ。
子供ながらに自分が支えなければいけないと感じたのか、和也はアルバイトを始め、バイト代を全額母親の着物代に充てていた。
あの斎藤と言う男さえいなければ―――。
憎悪は頂点に達し、遂に地獄通信へのアクセスが可能になるほどに。しかし、あいと仮契約こそしたが地獄と言う将来自分が行く場所に対する想像がつかない和也はなかなか糸を解くことが出来なかった。
このまま糸を解かないまま終わるのか、と思われたある日。
定期マラソン大会が開かれたその日、和也は持前の運動神経でトップで独走する。しかし、その眼に映ったのは、母を言葉巧みに騙していることを同僚への電話で暴露している斎藤の姿だった。
その言葉と態度で和也の憎悪はついに藁人形の糸へと伸びて―――。
感想・考察はOPENからどうぞ。
<感想・考察>
市村和也
正直、絡んだ登場人物全員に直接的要因があるようでなく、間接的要因がないようである、そんな良くも悪くも掴みどころが難しい30分でした。
和也の場合、今の市村家の状態に直接かかわるようなことはしてないです。中学生ではあるものの、冷静に人を見ていて斎藤と言う男に対する見解もしっかりしていました。しかし、もし彼が今の状況を作ってしまった要因の一つであるとすれば、それはアルバイトでしょう。
アルバイトをし、さらにそのアルバイト代の全額(ないしほとんど)を母親の着物代に充ててしまった事実は結果として、母親が「父親(母からみれば夫)は自分を愛してくれている。だからお金も補填してくれている」と勘違いを生み、さらに現状悪化へと助長させてしまったことでしょう。
これは推察ですが、おそらく着物をあんな風に買い込むようになったのは最近なんだと思います。長くてもここ数カ月から1年前後。それより前は、どこにでもいるような普通の家族だったような気がします。だからこそ、和也からすれば母親の変貌は直視するのも避けたいほどの姿だし、そんな風にしてしまった斎藤は憎悪の対象なのでしょう。
それでも母は母。
子供にとって母親ないし両親と言う存在の大きさはやはり強いのだな、と改めず再認識。そんなことは別に改めなくても解っていることなので(汗
ただ、実際にこういう風に地獄少女で描かれると、客観的に再認識します。
市村芳雄
和也の父です。彼の思考も傾向として和也に近いものがあると言えるでしょう。上で上げたように、おそらく以前の妻はちゃんと夕飯の支度もするし、家事もしっかりとこなしていた。
だから、おそらく最初に妻が着物を買いたいと言い出した時(もうこの時点で斎藤に騙されているわけですが)には、芳雄も快くそれを了承したのだと思います。そして、そのためのお金も積立をした。裕福そうな家ですし、着物を買うまで堅実な生活をしていたと仮定すれば着物一着分を一括だろうとローンだろうと用意するのはこの家庭ならば難しい話じゃない気がしますし。
そして、着物を着た妻を彼は褒めた。妻は夫が褒めてくれるから、自分がきれいになればもっと褒めてもらえるのだと欲を出し、美へとさらに執着した。
結果として妻は斎藤の口車に乗せられて着物を何着も購入。限度の越えた購入とその姿に夫である芳雄の方が客観的に醒めてしまい、夫婦間での温度差を生むことになったのだと思います。
それでも仮に彼女がしっかりと変わらず家事をしており、限度を弁えた購入を続けていればそれは夫から妻へのささやかなプレゼントであり、妻が女を明確にできる瞬間の確保で留まったはずなんですよね。
でも、妻は家事を放棄し、美しければそれだけで夫の愛が手に入れられると勘違いしてしまった。
この辺りの温度差と勘違いが今回のミソのような気がします。
市村君枝
言うまでもなく彼女は愛に飢えていたのだと思います。
愛だけじゃないのかな。誰かから褒められること、綺麗だと称えられること……。そういったものに飢えていたからこそ、斎藤のような言葉に軽く騙されてしまった。
正直、ネタとしてはちょっと古いですけどね、この手の詐欺紛いの手口が社会問題化したのはもう少し前ですし(ただ、そこから今に至るまで続いてはいるのですが)。
斎藤からすれば少しでも商品を売るための話術のはずでしたが、甘い蜜をもっと多くすすりたいがためにやりすぎてしまった。
問題は、それにさえ君枝が気付けなかったことでしょう。普通に考えればおかしな話なのですが、それさえ判断できていない状況は、数年前の詐欺的手口での商法に騙される方々を見ているようで・・・・・・。
もし、息子である和也がお金を入れていなければ、夫がお金を振り込んでくれないとしり、また違った展開だったのかもしれません。
結果的に和也の行為は問題を助長させただけ、と言うのが少々鬱な感じです。
個人的にラストは、離婚し親権を父親が得て転居、と言う形ではないかと思っています。昼間、学校に仕事のはずの父親が両手を振って迎えに来る、と言うのは二人にとって君枝と言う存在に対してある程度吹っ切れたからではないか、と。
対する君枝は斎藤の同僚(?)と思われる人に相変わらず口車に乗せられて騙される毎日。この辺りの対極っぷりが数少ない救われたところなのかも。
次回『滲んだ頁』。
<TB先 参照リンク(URLアルファベット順)>
赤字はTBが現在弾かれてしまっているBlog様です。
・http://blog.goo.ne.jp/yyrickyleo/e/fbfbf93a6f7002f74f95b543942d9053
・http://blog.livedoor.jp/koubow20053/archives/51157019.html
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