シゴフミ 第2話
―――純粋な犯罪者ほど怖いものはない。
名誉でも、金銭でも、物品でもない。明確な想いの下でその手を犯罪に染めていく明日奈。
どこから聞きつけたか、殺した翔太との関係を疑われていると知った明日奈は髪を切り、逃亡を図る。そんな彼女の前に現れたのはフミカだった。
その手には、シゴフミが―――。
感想はOPENからどうぞ。
<感想>
廃屋で視たモノ
翔太は希望を、明日奈は絶望を観ていたと言うことでしたね。まぁ、もともとあんな廃屋で出逢ったこと自体に不自然さがあるわけでw
明日奈がやらされていたのはモデル―――もちろん普通のものではないですが。でも、女性にとってそれは恥辱であり悪夢であり絶望であったことだけは確かで、同じ廃屋のちょっと違う階では希望で目を輝かせている男がいることは皮肉でしかない。
綾瀬明日奈
父親を殺した動機は、妹にまで父親が自分と同じバイトをさせようとしていたから。無論、それだけではなく自分がこれまでさせられてきたコトに対する恨みもあっただろうが、引き金となったのはやはり妹のことだろう。
自分に対するコトではなく、妹に対してされそうだったコトに対して反応したのは明日奈らしいのかもしれない。
守るべきモノが見えている彼女にとって、それを阻むモノは全て排除すべき敵なのだろう。故に父を殺し、秘密を知った翔太を殺した。
彼女にとって不幸だったことは、これまでのコト(父親に強要されていたバイト、そこに群がる男ども、そしてどこで知ったかそれを嗅ぎつけてイジめに走る同級生)で妹以外の人間に対して極めて疑心暗鬼になっていて、不信しか持っていなかったこと。
だからこそ、彼女は秘密を知られる=通報されて自分が捕まり、未来が閉ざされるとしか考えられなかったのだと思う。
もし彼女が捕まればそれがネタで妹がイジめられることは目に見えているし、それらを考えれば自分のことも踏まえて絶対に捕まるわけにはいかなかった。
それは積み上げられてきてしまった出来事のため仕方のないことだったのかもしれないけれど......。
町屋翔太
彼が残したシゴフミは、明日奈への謝罪。ここで最終的に謝罪をシゴフミとして託す辺り、翔太が抱えていた明日奈への気持ちの重さと強さと純粋さが伺える。自分を殺した相手に謝るって、(もちろん私にはそんな体験はないので想像ですが)きっと本当にその人のことを想っていないと出来ないモノでしょうし。
だから、たぶん翔太ならありのままの明日奈を受け入れた気がする。と言うか、受け入れたでしょう。実際、彼は盲目なまでに彼女を信じ続けていたわけで(ただ、それはありのまま、と言うよりも、彼女の無罪を、ですが)。
男だったら誰でも同じに見えていたはずの明日奈の心を動かしたほどの純粋な想い。確かに出逢いはロケットで彼女はロケットに自分と彼が共に歩める未来を夢見ていたのかもしれないけれど、私は彼女がロケットが飛ぶことを信じ、さらに翔太と一緒にいることを選んだのはほかならぬこの想いを無意識に彼女が感じていたからではないかと思う。
明日奈は自分に向けられる純粋で強い想いに弱いと見える。だからこそ、妹に対しては彼女はありのままで居られた。無機質で何も感じず―――むしろ悪意さえ感じるレンズばかり向けて来る男たちとは明らかに違ったであろう、翔太の持つ想いと眼差しに明日奈は妹以外の自分の居場所を感じ、そして求め続けていたのだろう。
ロケット
それに気づかされたのは翔太のシゴフミだったのでしょう。先に挙げたように自分を殺した相手に謝る翔太の想いの純粋さに、彼女はロケットを飛ばすため、悪夢だけでなく翔太と時を過ごした廃屋へ戻ります。
ロケットを飛ばすことは、彼女なりの償いだったのかもしれません。そして屋上に合った完成したロケット。そこに残された自分と妹の名前を見て彼女は改めて翔太の想いを確信して、それを飛ばすことを決めた。
たぶん、ナイフを取り出して切りかかれば、その目的が自分を追い詰めている刑事じゃなくて絡んでいるロープであっても撃たれることは想定していたと思います。それでも彼女は飛ばすことを選んだ。
それは、純粋な犯罪者になってしまった彼女らしい選択なのかもしれません。ただ、自分の目的のためならば自らさえ顧みない想いと行動力。
願わくば、それが正しい方向に使われていれば、と思ってしまいますね。父親を殺すのではなく、警察に駆け込むなり、児童相談所に行くなり。むろん、証拠がなければそのようなところは動かないわけですし、そうすれば世間に自分のしてきたことがあらわになってしまうかもしれないけれど……。
次回「トモダチ」。またしても学園モノ。
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