君の名は。 感想
いや、あまりに世間が盛り上がっていて、個人的には近年の邦画で最高峰だと思っているあの『シン・ゴジラ』すら上回る興行収入と観客動員になりそうだ(もうなった?)と耳にして、ミーハーな自分は「なら観に行くか」と(笑
こんなBlogをやっている自分ですが、案外邦画のオリジナルアニメーションというのは観に行かないことが多いです。確かに『アニメ』と広義では同じジャンルかもしれないけれど、いわゆるオタク的なアニメと万人向けなジブリや細田監督系のアニメって感覚的に違う、と思っているので。どう違うのかと問われてしまうと答えは苦しいのですが。
さて、感想ですが、面白かったと思います。ただ個人的にはここまで興行的に成功したり、ニュースで報道されるような「平日でも大勢の人が見に来るほど」という感じだったりではなかったかな、というのが本音です。正直、ここまでヒットしている要因が私にはちょっと分からなかったほど。
しかし誤解しないでいただきたいのは、別にそれはつまらなかったというわけではなく前述のように面白かったことは間違いありません。
まずキャラクターが絞られている。クレジットでメインキャストの数を観れば分かることですが、案外120分の上映時間のアニメの割にはメインとなるキャスト数が少ない。それだけ本当に必要だと思われるキャラクターだけが残っていて、そのスリムな中でキャラが動きストーリーが動いているのだ、という感じです。
ただ尺不足だったのかな、とは思います。例えば瀧や三葉が互いへの想いを自覚する過程は正直やや駆け足だったかな、と。劇中ではダイジェスト風に流れてしまった互いの交換生活ですが、本来ならもう少しここを濃密に描きたかったんじゃないかな、と思うんですよね。ダイジェスト風に終わったメリットもあるにはある(例えば三葉の肉体に瀧が宿った際、陰口を叩く同級生を威嚇するシーンや逆に瀧の肉体に三葉が宿って奥寺先輩と親しくなっていく様なんかは全部を描かずあのワンシーンだけを描く方が印象はプラスだと思います)のですが、そうした交換生活によって瀧と三葉がある種の交換日記のようなものを繰り返すことでお互い異性としての意識を強めて行く過程はもう少し欲しかったところじゃないか、と思うんですよ、やっぱり。
恋愛要素を入れた作品だけど、互いに恋をしていく過程がすっぱ抜かれてしまった感があるのがちょっとな、と。
他にも三葉の家庭の事情や不仲な父とももう少しやり取りがあってとっかかりがあると最後のシーンへと繋がっていく気もするのですが、やはり時間的な都合だったのかそういう部分は一切合切カットされてしまっているのがストーリー的にはいろんなものが「ぶつ切り」になってしまった感じがあって勿体ないなと思ってしまいます。
一方でもしこれが意図的なモノだったとしたなら、とも思っています。具体的に言うと、意図的にキャラクターの内面を深く描き「過ぎない」ことを意識して敢えて描写を抑えているのかな、と。
これをする最大の利点は、たぶん万人受けしやすくなる、ということかなと思います。内面を深く描くということは、どうしても人間としての負の部分を描かないわけにはいかず、そういう意味で人を選ぶ瞬間が多くなってしまうと思うのですが、そういうところがこの作品にはあまりない。これだけのヒットは宣伝広告の効果、SNSなどのネット口コミによる拡散もあるのでしょうが、こうしたライトに観れる=老若男女問わずに足を運べるハードルの低さというのもあるのかもしれません。
加えて評判通り良かったのは作画でしょう。綺麗だし、モーションもカット数が多く細かく、いわゆる「ぬるぬる動く」感じ。彗星の流れから、さらに変な話ではありますがその彗星の片割れが落下して周囲を破壊していくシーンの映像美というのは圧巻。凄いな、と素直に思いました。
音楽も実に効果的に入っていると思います。ストーリーだけでなく、キャラクター(キャスト)、映像美、音楽など総合的に一本のアニメを作っている、という感じですね。
それにしても、『サマーウォーズ』とかもそうですが彗星とか衛星とかそういうものの落下って流行りやすいんですかね(ぇ
評価は、★★★★☆(4.5点 / 5点)。青春、恋愛、サスペンスと万人受けする要素が盛り込まれている。何よりそれらを最大限に引き出す作画と音楽の力が素晴らしい作品。
NoTitle
1クールくらいのテレビ放送アニメに再編集でもしてくれればもっと楽しめそうですが。