Another 第10話
『Glass eye -漆黒-』
≪あらすじ≫
八月八日。いよいよ始まる三組だけの夏合宿。綾野一家の最期、小椋の兄の事の顛末を聞いた生徒たちは、逃げ場はないのだと悟り、また参拝をした年に“現象”が止まったという噂も広まり、予想以上の人数が合宿に参加することに。
当然、その場には恒一や鳴たちの姿もあり、勅使河原たちも。副担任からの代行となった三神だけでは不安もあるのか、司書であるはずの千曳も同行してくれていた。
豪華な合宿所。一時解散になった時を見計らって、恒一たちは望月が修復してくれた、松永の残したテープの続きを聴くことに。そこに残されていた松永からの助言。それは彼の罪の告白でもあった。
彼は参拝し二人の犠牲者を出しながら下山した直後、とある生徒との間で口論が発展し殴り合いの喧嘩をしてしまい、誤ってその生徒が倒れこんだ先に鋭利な木の枝があって……殺害してしまった。同級生を殺したと言う事実に脅えていた松永だったが、次の日になっても誰もその生徒がいないことに疑念を抱かないことを不思議に思った松永がたずねると、誰もその生徒のことを覚えていなかった。
松永はこれらのことから、自分が殺してしまった生徒こそがその年に紛れ込んでいた“死者”だったのだと悟った。以後、“現象”は止まったが、この事実が他のクラスメイトと同じように記憶が改竄され失われる前に後輩への助言として残すことを決めた。それが恒一たちが見つけたテープだった。
「死者を死に帰せ!」
そう最後に纏められたテープの内容。しかし、それは自分たちの手で三組の仲間の誰かを殺さないといけないということ。“死者”そのものを判別する方法がない段階では、松永の出来事はただの偶然でしかなく、下手をすれば“死者”ではない仲間を殺してしまう可能性も……。
結局、テープのおかげで対策を得ながらもどうするか決められないまま、夕食を迎えた恒一たち。そこで泉美は、突然対策係として自分に非があったと謝罪をすると、さらに泉美は“居ない者”を演じ切れなかったとして鳴に謝罪を要求する。恒一に加え、勅使河原や望月も意味のない謝罪だと反発。
その瞬間、和久井という生徒が突然喘息の発作を起こして倒れる。薬も切らしていた上に、固定電話、携帯電話の全てが不通。この状況に千曳は自らの車で和久井を病院に送り届けると言って飛び出す。
参加生徒が一人減った合宿所。そこで鳴はこっそりと恒一に「あとで私の部屋に来てほしい」と告げる。そこで鳴は、恒一が持参した二十六年前の三年三組の写真を見せてもらうと自らの隠された出生と左目の義眼の秘密を明かす――
≪感想≫
相変わらずの長文。いつにもまして長文です、読みづらくてごめんなさい(苦笑 本当は追記に分ければ良いんですけどね。追記にはリンクがあるので……。
◆鳴の罪、泉美の罪
今回、印象的なシーンを挙げろと言われたら、ここにきて犯人捜しをし出した赤沢泉美の愚行だろうか? これについては賛否両論あるだろうが、私は先週書かせていただいたようにこの段階での犯人捜しに何の価値も見出さない。現在進行形で“現象”が続いている以上、また彼女が自ら立候補して“対策係”になったのならなおのこと、彼女が練るべきは「対策」であるべきで、犯人捜しや責任の所在の確認と言った「追及」ではない。
さて、小見出しでも書いたように「鳴の罪、泉美の罪」だが、まずは鳴から。
鳴がもし何か責任を問われるのだとすれば、それは双子の存在・未咲がいて、その未咲が四月に亡くなっていたことを隠していたことだろう。その点において、鳴は「“現象”が始まった可能性がある」という情報を共有しなければならなかった。
だが、それはあくまで対策上の話である。今、クラスメイトが考えている「鳴と恒一が話をしたから、対策は効力がなくなって“現象”が始まったのだ」という原因に帰結するものではない。なぜなら、未咲が死んだと言う時点でもう死者が出ているわけだから、つまりもう“現象”が始まってしまっているわけだ。そして、一度始まった“現象”を止める手立ては今のところ明確に存在していない。
その状態で「私の双子の姉妹が死にました」とクラスメイトに告げても、なにも出来ない。“現象”は始まったら止められないわけだから、今更“居ない者”を仕立てても無意味で、クラスは混乱しパニック状態に陥っただけだっただろう。
この点で言えば“現象”が始まってしまったのは新学期が始まった時点で対策を講じなかった対策係の失態であり、鳴は対策係が対策を講じなかったことに対しての罪を言及する権利(双子の姉妹が死んだわけだら「あなたたちがちゃんと対策を講じていれば未咲は死ななかったかもしれない!」と詰め寄る権利はある)はあっても、対策係から責任を追及されるべきではない。
それでも彼女が赤沢たちを責めることなく、また身内を亡くしながら自ら“居ない者”の役目に拒否権を行使せずに受け入れたのは、彼女はそれが自分にとっての“罰”だと思ったからではないだろうか。
クラスメイトに情報を共有出来なかった自らの罪。先に挙げたように未咲の死が“現象”によるものなら、もう始まってしまった“現象”なわけだからこの情報の共有があろうが無かろうが、もう“現象”は止まらないわけで鳴に罪もなければ罰もない。
加えて、鳴は藤岡家から養子に出されているために関係が曖昧だったこともあるだろう。鳴が普通養子なのか特別養子なのかは分からないが、鳴の養母(霧果)が一生そのこと(鳴が養子であること)を隠しておきたかったのであれば、特別養子にしている可能性が高く、そうなると戸籍上はほぼ完全に鳴は見崎家の人間となる。
そうなると、鳴と未咲の関係は戸籍上は従姉妹だ(もちろん生物学上、ないし遺伝子的には双子だけど)。この場合、“現象”は戸籍上の二親等を狙うのか、あるいは血縁上で二親等なら戸籍上で二親等外でも適用されてしまうのかが分からない以上、彼女が安易にそのことを口にするのを本能的に躊躇ったとも考えられる。
それでも、鳴はそれを隠し続ける罪の代価として、“居ない者”の役目を負うと言う罰を背負ったように見える。恒一の転校、名乗り出る前に対策係・教師側から提案されたと偶然が重なったものの、“居ない者”となっても表面上取り乱すこともなく淡々とその役目を受け入れ、恒一に対しても当初はその役目を果たそうとしていたわけだから、私にはこれこそが鳴が自分自身に課した罪であり罰のように見えた。
ちなみに、鳴を擁護するとなると二つの点で鳴を擁護できる。
一つは、「鳴が恒一と話したせいだ」ということに対する反論。そもそも鳴は、恒一が話しかけても当初は相手にもしなかった。三組の事情について、“居ない者”の役目を負った鳴が自ら説明するわけにはいかないことくらい誰もが百も承知のはずで、故に対策係を中心にクラスメイトでやらなくてはいけなかったことを彼らは放棄していたわけだから、この点においても鳴に何かの責任を追及すること自体がそもそも間違っているわけだ。
もう一つは、先にも挙げたが鳴の双子の未咲が死亡した時点で“現象”がスタートしていたなら、もう“現象”は始まっていたわけだから五月以降の“居ない者”のやり取りは客観的に見ればただの茶番に過ぎず、もともと何の効力も発揮していなかったわけだ。だから、鳴が“居る者”だろうが“居ない者”だろうが何の意味もなかったわけだから、鳴を追及する意味は無い。
あとは詭弁になるが、あくまで未咲とは戸籍上従姉妹なので二親等ではないと言い張ることも出来る。
さて、もう一つの罪は赤沢泉美か。彼女の罪は、むやみやたらな煽動(犯人捜し)だろうか。あの状況でわざわざ食事中に鳴に対して責任の追及をする必要があっただろうか? 仮に鳴があの場で謝罪して頭を下げて何かが好転するのか? “現象”は止まらず続いているわけで、それは何も変わらない。
彼女が対策係として十分な対策を講じられなかったことを私は罪だとは思わない。そもそも座席の数と生徒の数が一致していては誰もが「今年は無い年なのかも」と期待してしまうのは無理のないことで、この状況で「居ない者対策をしよう」と口にすることは出来ないだろう(そもそもそんなことをしてしまっては、今年が“ある”年なのか“ない”年なのかの判別すら出来ず、“ない”年だったのに“居ない者”一人を一年間クラスの中で省いてしまうことになってしまう)。
そう、本当は今年の“現象”に限って言えば犯人なんてそもそもいないのだ。あの状況で誰かの責任だと言うことは極めて難しい。二年前のように役割を放棄した人間がいるならまだしも、そうではないのだから。
それでも罪の所在を明らかにしたいのであれば、それは恒一の転校のことをずっと黙っていた教師たち(四月の時点で決まっていたはず。恒一が五月からの登校になったのは入院していたからで、予定通りならちゃんと四月の中旬から通っていたわけだから)と教師たちの忠告を無視して恒一を三組にした校長だろう。
こうなってしまうからこそ、私は犯人捜しに意味を見出さないのだ。もしも犯人なんて捜し始めたら、上記のように校長やら教師やらになるわけで、もしクラス内だけで罪の所在を明らかにしようものなら、それこそここまで書いてきたように突き詰めれば詰めるほど鳴に非は無く、赤沢自身はもちろん恒一への対策が出来なかったクラスメイト全員の責任が判明するだけなのだから、自分の首を絞めるだけだ(「演じてくれていれば」なんて言うのは、“居ない者”という嫌な役目を押し付けておきながらその立場の意識がまるで欠如しており最低な発言である。尤も、そのことに気づいてくれるのが恒一や勅使河原、望月くらいというのが、このクラスがいかに今精神的に参っているかの証拠でもあるが)。
そしておそらく今のクラスメイトが望むのはそんな犯人捜しではないだろう。
今、彼らがすべきで、彼らが望むことは何なのか?
それは別に今更犯人捜しなんかではなくて、この残りの数か月を残った全員で無事生きて卒業することではないのか。犯人を捜すことと生き残ること。そのどちらかを望めるとして、はたして前者を望むクラスメイトがいるだろうか?
この“現象”のトリガーを引いてしまった犯人を捜すことで“現象”を止められるならそれでもいい。だが、そんなことで止まらないのは、別に松永のテープなど聴いていなくてもだれもが分かってることだ。
にも関わらず、彼女は犯人捜し(責任の所在追及)をしてしまった。
対策係としてはこれ以上ない失態であり、失策であり、致命的なミスだ。この一言のせいでクラスの中に疑心暗鬼な思考を巡らせることになる。「誰のせいでこうなったのか」なんて今はどうでもよくて「この状況をどうすべきか」を考えるべきはずなのに、赤沢泉美の発言のせいでクラスメイトの多くは前者の思考に捉われてしまうことだろう。現に同じカットに映っていた小椋は頷いていたわけだから、彼女は立派に泉美によって煽動されてしまったわけだ(まぁ彼女としても親友一家と実の兄を喪っているわけだから、安易な犯人捜しに協調しやすかったのだろうが)。
疑心暗鬼になれば、もはやその組織から統率が消える。泉美だろうが、委員長の風見だろうが、あるいは担任の三神だろうが、統制は取れなくなる。そしてそれは生徒たちの精神を著しく摩耗させ、それは久保寺の悲劇の再来を生む温床と化す。
中学生にここまで考えろと言うのは酷なことなのかもしれないが、この泉美の発言はおそらく次回予告のあの風景へと繋がるのだろう。疑心暗鬼に捉われたクラスメイトたち、そこに何かの悲劇があるのならその悲劇のトリガーを引いたのは間違いなく泉美だ。
自らの罪を自覚し自らの罰を与えた鳴。それとは対照的に自らの罪に自覚していない泉美には、どんな“罰”が待っているのだろうか……。
(以下、犯人の犯行手段を明確に特定する考察です。当たっているかどうか分からないものの、当たっていたら申し訳ないので、そういった事件の真相に関わる推理や考察を嫌う方は閲覧しないことをオススメします)
◆推理パート -あと一手が足りない…-
赤字が今回語られた部分。
-概要-
・二十六年前の三年三組の出来事が原因の天災に近い“現象”である
・死者を招き入れた結果、クラスメイトが一人増えることになった
・その増えた一人を特定することは出来ない(記憶が改竄されるため)
・死者の手は冷たいという噂があるが、真偽は定かではない
・記録もそれに合わせて書きかえられる模様(クラス名簿も書き換えられる)
・改竄された記憶と記録は卒業後、元に戻る
(そこで記録が戻ることで本来居ない“死者”が誰なのかが分かる)
・紛れ込む“死者”は、過去にこの“現象”で死んだ人である
・紛れ込む“死者”は、生前と同じ名前を使う(意図的な名前の改竄はない)
・一度死人が出ると、毎月死者が出る(二十五年前は生徒六名、関係者十名)
・“現象”の被害候補者は三組当事者と夜見山市内にいる二親等以内の親族
(担任・副担任も三組当事者に含まれる)
・“現象”が起こると当事者とその家族が夜見山から脱出することはよくある
・“現象”は「三年の三番目のクラス」に起きるため「C組」にしても無意味
・“現象”が起こったのは二十五年前、十五年前、五年前、二年前、今年
・“現象”が起こらなかったのは十年前、一年前
・“現象”が唯一止まったのは十五年前だけ(怜子・松永が三年だった年)
・“死者”を居ない者にしても意味がない
(一度“現象”が起きたらその方法では止められないと鳴は推察)
・“死者”を死に送り返す(殺害)することで“現象”は止まる。その際に記憶と記録は、卒業後と同じ状態になる(改竄が起こる)が、“死者”に関する記録は消滅する(そのため、十五年前だけ“死者”は判明していない)
-二十六年前(72年度)-
・三年三組だった夜見山ミサキは七月に両親と弟含め家が全焼し全員焼死
・クラスの人気者だったこともあり、クラスは一人の「あいつはここにいる」発言に呼応しクラス全員で卒業まで“居る者”として扱う(当時の校長の計らいで卒業式にも席が用意された)
・二十六年前の三組は、担任が千曳。クラスメイトは、リツコのみ判明
-二十五年前(73年度)-
・“現象”が“ある”年だったと思われる
・昨年度の三組の行動のせいで死者を招きやすい場所となり、三組と言う存在が“死”に近い場所となってしまう
・結果本来居ないはずの“死者”を招く
(クラスメイトが一人増え、座席が一つ足りなくなる)
・毎月、クラス関係者とその二親等以内の親族が死ぬ“現象”が発生
-十五年前(83年度)-
・“現象”が“ある”年だった
・恒一の母・リツコが死んだのは三組の“現象”の可能性が高い
・その十五年前は途中で死人が出るのが止まった(リツコを入れて八名死亡)
・その年の八月八日~十日の合宿が契機になったと思われる(何があったかは不明)
・合宿中に夜見山中腹にある神社に参拝したが、効果なし
・参拝後の下山途中に二名死亡(浜口、星川)
・下山直後、松永は口論で一人の生徒を殺害してしまう。
しかし、その生徒が実は“死者”だった
・“死者”を死へ送り返したことでその後の現象は止まった
・しかし、“死者”に関する記憶は急速に改竄された
・松永は懺悔と後輩へのアドバイスとして詳細を語ったカセットテープを三組の掃除ロッカーの裏に残す
・死亡したのは「怜子の姉・榊原リツコ(女、7月)」上記「浜口(男、8/9、落雷による感電死)」「星川(女、8/9、事故による転落死)」と、「生徒の妹・杏子(女、4/12、病死)」「名前不明(6/6、事故死)」「名前不明(6/13、事故死)」「生徒の妹・郁美(女、7/23、病死)」が確認されている。また怜子の発言から「ケンタロウ」「ナツコ」という生徒が死亡していることが確認済み。
-十年前(88年度)-
・“現象”が“ある”年だったが下記手段の成功によって“回避”した年
・増えた一人に対して一人減らす対策が講じられ“現象”の回避に成功
・以後、この対策が唯一の有効策として“ある”年は実施される
・ただしこの対策の成功例も完全ではなく五分五分
・この対策が失敗したときも明白な理由がある時とない時がある
-五年前(93年度)-
・“現象”が“ある”年だった
・死亡したのは「浅倉麻美(女)」が確定。
-二年前(96年度)-
・“現象”が“ある”年だった
・判明しているクラス関係者は担任だった三神と赤沢和馬(泉美の親族(兄か?))
・“居ない者”が役割を放棄したため“現象”が年度後半から起こる
・死亡したのは「赤沢和馬(男、10/1、事故死?)」「池乗彰吾(男、9/20、病死?)」「奥津亜美の姉(女、11/3)」「小野忍(男、1/29、他殺)」「山本輝(男)」は確定
・紛れ込んだ“死者”は「浅倉麻美(上記93年度の“現象”被害者)」
-今年(98年度)-
・“現象”が“ある”年である
・今年はクラスの人数と座席の数は一致していたが恒一の転入でやはり足りなくなった
・鳴が“居ない者”にされたのは五月一日から(一応拒否権がある)
・鳴の双子・藤岡未咲(鳴から見て二親等)が四月に亡くなっており、実は“現象”は例年通り四月から始まっていた
・死亡したのは「藤岡未咲(女、4/29、病死)」「桜木ゆかり(女、5/26、事故死)」「桜木ゆかりの母(女、5/26、事故死)」「水野猛の姉・沙苗or早苗←EDクレジットと名簿で名前が違う。誤植?(女、6/3、事故死)」「高林郁夫(男、6/4、病死)」「久保寺(教師・男、7/13、自殺)」「久保寺の母(女、7/12~13、他殺)」「中尾順太(男、夏休み、事故死)」「綾野彩(女、夏休み、事故死)」「綾野彩の父(男、夏休み、事故死)」「綾野彩の母(女、夏休み、事故死)」「小椋由美の兄(男、夏休み、事故死)」。
情報が多過ぎだったので年度別に再整理したつもりが、被害者を列挙したらとんでもないことにwww
今回重要なのは、藤岡未咲が鳴の従姉妹ではなく双子だったと言うこと。つまり、四月に死亡した未咲は鳴から見て二親等以内の親族に当たるため、これは“現象”による被害だとカウントすることが出来ることになり、“現象”は例年通り四月からスタートしていたことになる。
重要なのはこの後者の部分だ。四月から“現象”がスタートしていた。つまり、それは転入前の恒一とか、“居ない者”にされた鳴などが“現象”開始のきっかけを作ったように見せていたが、その実本当はそんなことは関係なかったと言うこと。
そして、クラスの人数と座席の数が一致しながら“現象”が起こったのであれば、もう“死者”が誰なのかは絞り込めたも同然と言うことだ。生徒が数の都合上一致し機能しているのなら、“死者”が潜り込める三組の構成員はもう誰なのか決まっている。
そう、三神だ。
人数と座席の数が一致しているのに“現象”が始まっていたのなら、“死者”はそれ以外の構成員として三組に潜り込んだと言うこと。そして、担任である久保寺の死後も“現象”は続いているわけだから、その構成員は副担任というポジションの三神以外にあり得ない。
もちろん、書類上恒一は四月から夜見山北中学の生徒だから、そこをカウントするならこれだけで確定事項とは言えない(恒一は恒一で、書類上ではなくあくまでクラスに参加した日からカウントしているらしく今回彼は五月から学校に来た自分=四月にはいなかった=四月の時点で自分はクラスの構成員としてカウントされていないと考えていたようだが)。私としてもこれだけの根拠で「“死者”はコイツだ!」と断言するつもりもない。ただ、可能性としては一気に高まったと言えるだろう。
だが、問題が二つ。
一つは一年半前の恒一の夜見山来訪の件。私はこれが怜子の葬儀だと推察しているが、今のところそれを裏付けるようなものはない。そうだとするならなぜ恒一は夜見山に来たのか? 彼の記憶が改竄されたのだとすれば、それは“現象”にとって都合の悪い記憶だから改竄されたと考えるのが普通だ。なら、その点においてどこが都合の悪い情報だったのか?
もう一つは、恒一と泉美の出逢い。冒頭の泉美の夢が本当なのだとすれば恒一が一年半前に来ていたのは事実のようだ。そして泉美の状況を考えれば、時期的には秋(おそらく10月初旬。上記のとおり10/1に赤沢和馬が死亡しているため、その葬儀の前後と思われる)。そうなると、恒一はそのタイミングに夜見山にいたと言うことだ。
(ただし、この夢には正直懐疑的である。なぜなら恒一がパジャマ+カーディガンという姿だったため。普通、あの格好では出歩かないだろうし、あの格好は泉美が初めて恒一とあった病室で彼が着用していたものだったような……。そうなると、あの夢は潜在的に疲弊した自分を救ってくれる存在として泉美が恒一を求めていると言う暗示ではあるが、具体的に出逢ったシーンではない気がする)
恒一が9~10月に夜見山に来るとすればよほどの用事のはず。しかし、今の恒一に夜見山に来た記憶はない。それはつまり、彼は盆暮れ正月にも夜見山の実家には帰ってきていない可能性が高いと言うことになり、9月の彼岸(秋分の日前後3日)で帰って来たわけでもないということ(帰ってきているなら記憶はあるはず。まさか生まれてからこの15年間全ての帰省の記憶が改竄されたとは考えにくい)。
そうなるともう冠婚葬祭くらいしか考えられないわけだ。つまり葬儀。時期的に考えられるのは、上記のように池乗という9/20に死亡した生徒か、あるいは赤沢和馬と知り合いという可能性だがその伏線は今のところ発見できない。
あとは、怜子がこの9/20~10/1までの間に“現象”によって死亡しているのであれば恒一が夜見山に来ている理由にはなるが、それはそれでまた「怜子が仮に“死者”だとしても、怜子は今の三組の構成員ではない(紛れ込んでいない)」「怜子はそもそも二年前、どうして“現象”の被害に遭ったのか?」の二点が説明出来ないので、今のところ意味は薄い。
だが、最初に挙げたように(恒一の存在がいるため何とも言えないが)生徒の数と座席の数が一致し、それでも“現象”がスタートしているのならもう残る可能性は二枠しかないはずなのだが……。
◆「“三神”“怜子”」説の可能性
引っ掛かったのは、二十六年前の写真。
これが引っ掛かった最初の理由は怜子の使っている離れから見つかった点。リツコの遺品に分類されるこの写真がどうして怜子の使っている離れにあったのか? 仮に怜子が一年半前に死亡した(そのために恒一は夜見山に葬儀の為に訪れた)のだとすれば、リツコの遺品がある離れは本来物置として使われていたが、怜子が死者として復活した際に、部屋の配置などで記憶改竄を最小限に留めるため敢えて離れを遣っている可能性。
次に引っ掛かったのは彼女の職業。「こっち(絵を描く)のが本業なんだって」と言うのは恒一の話だ。つまり、彼女は画家を目指してはいたが今はそちらは副業になってしまっており、本業として別の仕事を持っていると言うこと。そしてその仕事は、実家から十分通える圏内であることが分かる。
そして、おそらくリツコと怜子が一緒に映ったモノと思われる写真だ。リツコは二十代、怜子は十代半ばから後半と言ったところか。問題はその二十代のリツコが、“とある人物”に似ていること……そう三神だ。
私は最初視聴した時は、「これって怜子と三神を繋ぐヒントなんじゃ」と思った。怜子と三神が一緒に写真に映っている。そして今回明らかになった鳴と未咲の関係性が、もし怜子と三神にも適用されるのだとすれば……。
しかし、改めて観返すとそのシーンのニュアンスから三神そっくりに見えた女性はおそらくリツコなのだろう。そもそも仮に怜子と三神が双子だったとするなら、恒一はそのことと鳴たちの関係でピンと来るような気がしたし、鳴たちと同じようならやっぱりちょっと推理としては矛盾点がある。
だが、問題はそこではなくて二十代と思しきリツコが三神に似ている点。そして、鳴が口にした「リツコと怜子はとてもよく似ている」という点。
鳴は「似ている」と口にした。これは何かの比較対象があって初めて言えることだ。だから彼女は「似ている」と口にしたのである。問題はその比較対象が何なのかと言うことだ。当然、リツコと怜子を比較して「似ている」と口にしたわけだ。
そしてこれは勘繰り過ぎかもしれないが、鳴が「似ている」と口にしたシーンは絵を描く怜子と三神そっくりのリツコの写真が映ったシーンだった。その写真を見て鳴が「似ている」と思ったのであれば、三神そっくりのリツコが怜子と「似ている」と言うことになる。
(その直後に鳴は「子供の頃の顔~」と言っていたので、「似ている」発言はそちらにかかっている言葉の可能性もある。ただし、そのシーンではちゃんと子供の頃の写真が出てきていたことを考えれば、鳴が最初に「似ている」と口にしたシーンで鳴たちが見ていたのは、二人が映る写真だと考えて良いのではないか)
つまり、これらを繋ぎ合わせれば二十代であろう今の怜子は、三神そっくり――瓜二つと呼んでも差し支えないほどということだ。普段は髪をアップにしていて、髪を全部下ろしている三神とは印象が全く異なるが、怜子はリツコそっくりで、当時二十代のリツコが今の三神そっくりなら、今29~30歳である怜子は三神そっくりと言うこと。
そうなると双子以上に真実味を帯びてくるのは、怜子と三神が実は同一人物であると言う説。前々から感想Blogの一部ではそんなことを述べていたり、あるいはコメントでそれらしいことを口にされている方もいたりしたが、根拠がなくて正直相手にしてこなかったのだが、こうなってくると話は違うのかもしれない。
そして明らかに怪しいのが怜子の苗字が明らかになっていない点、そして三神の名前が明らかになっていない点。この二つが示すものが、実は両者は同一人物「三神怜子」であるとするなら、辻褄が合う部分も多い。
例えば、
・怜子は本来絵が描くことを本業としたがっている+三神は美術教師
⇒怜子は画家を目指したが生計を立てるため、美術教師になった
・望月の海での怜子への対応
⇒元が三神怜子という同一人物なら、彼の対応は惚れている女性への気配りとなるため一貫性がある
・望月以外の生徒の怜子への反応
⇒今思えば、恒一以外は初対面のはずの怜子と鳴や泉美たちは普通に接していた……あれだけの人数がいて全員だ。初対面なら自己紹介やら何やらがあってもいいのにそれがない。もし三神=怜子なら、それがないのは当たり前だ(だって毎日会ってるクラスの副担任なんだから)
・一年半前の恒一の帰省+松永の言動
⇒「三神怜子」として二年前の“現象”により秋口に亡くなっているなら、恒一の帰省、泉美との出逢い、松永の「十五年ぶりじゃなくてもっと最近逢ってないか?」発言、祖父の「リツコも怜子も可哀想になぁ」発言などいろいろと辻褄が合う。
あとは鳴が、その左目の義眼で死者が三神(怜子)であると突きとめてくれれば楽に解決だが、次回予告を見る限りそう簡単でもないのだろう……。
お知らせ、と言うほどではありませんが、明日『Another』の本筋とは関係ない考察の記事を挙げる予定です。
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普通なら、転校したばかりの生徒がそんな事知ってるなんて思わないけれど、三神=怜子なら、「同居している叔母さんどうかしたの?」と思って聞いたのだと考えられますね。